引っ越してからの日々
@kurodoss
第1話
首都圏の地方都市、駅から徒歩五分。四畳半のワンルームとは言えユニットバス完備で、破格の八千円。安さの秘訣は、その有り体にあるのだろう。
掘建て小屋の名称をほしいままにする、そのアパートの築年数に関しては、知らない方が精神衛生上良いと思う。
瓦の隙間から緑が生茂り、腐った板とトタンで継ぎ接ぎされた外壁は年季を感じる。
朽ちかけたそのアパートは、灯りが漏れ出ていなければ、ほとんどの人間が廃墟だと見間違うこと間違いなしで、陰気な雰囲気を垂れ流していた。こんな所で寝食を行うかと思うと寒気がするが、金が無いんだ、仕方ない。
不動産屋を何軒もハシゴし、見つけた最安値物件がここだった。
不動産屋曰く、これ以下の値段は事故物件になるらしく、ホームレスの方がよく借りるのだと。
幽霊と同居は御免被る、それにこの物件も、脱ホームレス御用達事故物件も、さして値段は変わらない。安心を買ったと思えば安いもんだ。
まぁ、見た目の話をすれば、このアパートが事故物件だと言われても遜色ないけど。
しかし、こんなボロ屋に住む羽目になるのならば、全力で大学受験に望めば良かった。
高卒フリーターに対して世間は世知辛い。
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