泣き虫神様にご用心?!

・恵実は哀しみの神様見習いシャルと出会い仲良くなる。シャルはセキと同じ経緯いきさつで天界から送り出された男の子だ。


恵実「それでね、あの後友だちが謝ってくれたんだ…」

シャル「びええぇぇぇぇ!!」

恵実「ど、どうしたの?!」

シャル「セキさんが怖すぎて涙が止まらないんですぅ!」



・しばらくして落ち着いたシャルは地上にやって来た理由を語る。シャルとセキは神様の養成所である『プルチック学園』の生徒であった。


シャル「リマさんは泣いてばかりのボクや、問題行動の多いセキさんに手を差し伸べてくれました。なので今度はボクたちがリマさんを助けようと名乗りを上げたんです」

恵実「そうなんだ。セキって実は優しいのかな?」

シャル「もしかして恵実ちゃんはセキさんのことが好きなんです?」



・恵実の上ずった声からシャルは確信した。怒りの勇気を与えてくれたセキに恵実が心惹かれつつあることを。シャルは自称『愛』の神として色恋沙汰には敏感なのだ。



・今までの怯えた態度とは打って変わって意気揚々と恵実をショッピングモールへ連れ出すシャル。恵実の恋を応援しようと張り切っているのだ。


シャル「神様見習いはふつう視認されません。でも少しの間なら可能なんですよ。見て見て!真っ白なワンピースに着替えてみましたぁ!」

恵実「かわいい服だね、とっても似合ってる!」

少年「ホントですかぁ?えへへ…ほめられると嬉しくて泣いちゃいそうですぅ~…!」

恵実「ええっ?!な泣かないで!」



・シャルと一緒に洋服を見ていた恵実はセキと鉢合わせする。


セキ「オイ恵実どこほっつき歩いてんだ…ってあ?シャルもいるじゃねぇか」

恵実「セキの友だちだよね?フロイデ退治も手伝ってくれるんだって!」

セキ「友だちィ?」

シャル「ごめんなさいごめんなさい!ボクたちが友だちだなんて思い上がりでしたよね!」

セキ「…はぁ゛?」

シャル「きゃーーっ恵実ちゃん助けてぇ!!」



・シャルを背後に隠しつつセキと対峙した恵実は、不意に泣き出してしまう。


恵実「…うぅ、二柱とも仲良くしてぇ…」

セキ「ックソ…だから泣くなって何度も」

シャル「どうして泣いちゃダメなんですか?」

セキ「なんだァ?テメェ」

シャル「つらい時は泣いていいんです。泣くことで人は冷静になって、立ちはだかる壁を見つめ直すことができる。怒りだけでなく哀しみからも人は強くなれるんです」



・セキとシャルは待つことにした。それでも一向に恵実の涙は止まらない。


セキ「いつまで待ってりゃいいんだ哀しみの神様見習いサンよォ」

シャル「もしかしたらこれボクの魔法かもです。ボクの涙に触れると泣き止まなくなってしまうんですぅ」

セキ「おいゴラァそれを早く言えェ」

シャル「魔法の解除条件は…」



・続く言葉を聞いたセキは怒りを露わにする。それでも恵実の苦しそうな顔から意を決してついに恵実の額に口づけした。


シャル「いや~どうなることかと思いましたよぅ」

セキ「他人事みてェに」

恵実「セキ、この服どうかな?シャルに選んでもらったんだけど」

セキ「アァ。悪くねェんじゃねーの」

シャル「っていうかセキさん~恵実ちゃんには甘くないですかぁ?」

セキ「うっせ。オレたちは何百年も生きてるが恵実はたった九年だ。その差だよその差」

シャル「ま、そういうことにしときましょう♪」

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