🌸(旧版:2023.05.28)

よん

あたしの前世は『神様』?!

・たくさんの星が瞬く夜。小学四年生の桜貝さくらがい恵実めぐみは、ベランダでレジンのキーホルダーを夜空に掲げていた。


恵実「うわあ、キーホルダーの中にお星さまが入ってるみたい…!」



・突如視界が暗くなったかと思うと右手のそれが消えてしまう。恵実が辺りを探していると頭上から声がした。声の主は見知らぬ青年。誰もいなかったはずのベランダの柵の上で青年があぐらをかき、恵実のキーホルダーをもてあそんでいる。


青年「オホシサマだぁ?こんなちっこいキーホルダーに収まるわけねェだろ」

恵実「わ、わかってるもん!そんな風に見えるってだけだよ!」

青年「ハッ夢があるこって」

恵実「…っ、返して!そのキーホルダーはお父さんにもらった大切なものなの!」



・青年は恵実に向かってキーホルダーを投げ捨てる。


恵実「あなたは一体誰なの?」

青年「オレの名前はセキ。怒りの神様になるために天界で修行中の見習い」

恵実「怒りの…神様、見習い?」

セキ「チッ!こっちが先に名乗ったんだからテメェも言え!」

恵実「え!えっと…桜貝恵実って名前で…桜が丘小学校に通ってて…」

セキ「まさか前世の記憶がねェのか」



・セキは再び舌打ちをするとベランダから身を投げてしまう。しかしその身体は宙を舞い、背中から翼を生やして恵実の前に舞い戻る。


セキ「一回しか言わねえからよく聞け。テメェは誤って転生しちまった元神様見習いだ。オレは今から手筈を整えて、明日の夜にテメェを天界へ連れ戻す」

恵実「ちょっと待ってよ!何言ってるか全然わかんない…!」

セキ「ア゛ァ?つべこべ言わず明日の夜にここで待ってろ!!」

恵実「ヒッ…!…うぅ、…」

セキ「泣くな。文句があんなら怒れ。感情を相手にぶつけろ」



🌸


・恵実が反論できないままセキは去ってしまう。夢であることを願いながら、翌日腫れた目をこすって恵実は学校へと向かう。


友だち「恵実ちゃんのキーホルダーいいな~!あたしにちょうだい!」

恵実「え、…うん」

友だち「やった~!恵実ちゃん大好き!」



・友だちと別れた瞬間恵実は首根っこを掴まれる。恵実の背後にはセキがいた。


セキ「ンだよ、オレには駄目でアイツには良いのかよ」

恵実「いやそういうわけじゃ」

セキ「じゃあ何だって言うんだァ?!」

恵実「だって、だって!!セキとは違ってあの子は本当に欲しがってるんだもん!プレゼントしたらいつも喜んでくれて…」

セキ「で?テメェは?」

恵実「…え?」

セキ「テメェ自身の事情はって聞いてんだよ」

恵実「あたし、の事情は…本当は…ほんとは、あげたくない。取られたくない。だってあたしの宝物だもん…!」



・セキは友だちのポケットからキーホルダーをひったくる。セキは恵実以外の人間には見えていないようだ。


セキ「神様見習いは万能じゃねェからな。オレの器用さに感謝しろォ」

恵実「…ありがとう、セキ」

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