神官

その音を聞けば

きっと分かる

刻まれた心音の

生きる世界が確かに見える


チクタクと刻まれた時の在り処

一歩近づくごとに肉体を忘れる


これは神聖な儀式なのですよ


アナタを手に入れたいなどと

私は一生口にはしない

ただ心の中で想うのみ


けれど

アナタの苦しみはここにある

笑顔もアナタの真実なれば

その生きざまを想うでしょう


今一歩ごとに近づいてゆく

心臓が私を引き留める

まだ人間でいたいのですか?


いいえ

もう充分です


少しづつ変わってゆくのは世界ですか?

それとも私の方ですか?

アナタがどんどん遠ざかる

それでも後悔だけは出来そうにないね


ずっと私は願っていました


生まれた時から

いえ

もっとずっと以前から


ここにいるのは私の意志です

けれど抗えないのも私の意志です

思い出す青空なんてありません

今ここにあるものだけが真実です


アナタはアナタを歌えばいいよ

それは許されたことなのだから

きっとアナタは隠してしまうけれど

いつかその断片に触れてみたい


でも


伸ばしかけた指を私は誤魔化す

アナタの意思にゆだねましょう


けれど


もし本当に

アナタが神格化された次元にまで

昇りつめようとしているのなら

ほんの些細な抵抗と私のささやかな忠義において

その手首を掴むことをお許しください


アナタにとって大切なものを

私も大切にしたいのです


だから振り払ってお行きなさい

あとで私も向かいましょう

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