魔王、勇者に封印されて1万年。封印が解けてまた世界征服?いいえ、私は平和に生きます。
林田たつや
プロローグ 封印と決意
あるところに、女がいた。彼女の名前はデリエリ。黒髪に黒目、それに対して肌は雪のように白く、とても美しい容姿をしていた。
彼女は周りからこう呼ばれていた。魔王と。
魔物を連れていくつもの町や国を滅ぼし、恐怖の象徴として君臨していた。
そこに現れたのは世界を救うために集った勇者一行。彼らは、世界を救う為、魔王城を目指した。
そしてとうとう魔王城までたどり着いた勇者一行は、魔王の前に立ち向かった。
「やっと追い詰めたぞ、魔王!今ここでお前を倒す!」
「ふははは、やれるものならやってみるがいい。今までの奴らとは格が違うということを思い知らせてやる!」
そこから激しい戦いが始まった。
激しい戦いの末、勇者一行は一人また一人と倒れていった。しかし、魔王も着実にダメージを負い、最終的に魔王と勇者の二人しか立っていなかった。
「・・・はぁ・・・はぁ。魔王これで最後だ!くらえ!」
それは最後の力を振り絞った勇者の最後の切り札、封印の魔法。それを魔王は躱そうとするも、ダメージを受けた体が思うように動かず、勇者の一撃が魔王に当たる。
「おのれ、覚えておれ勇者ども!私は必ずお前達に復讐してやる!」
その言葉を残して、魔王は消えた。こうして、世界には平和が訪れた。
魔王デリエリは、白い空間にいた。どこまでも続くその空間を見て、自分が勇者の一撃をくらったことを思い出す。
「ここは?・・・そうか勇者の最後の一撃で私を封印したのか。しかし、このような封印、すぐにでも解いてみせよう!」
それから数日後
「・・・さっさすが勇者だ。なかなか強力な封印ではないか。ただ、私の力を持ってすればすぐに解けるけどね」
そう言っている彼女の言葉は始めよりも元気がなかった。
更に数週間後
「・・・もう、なんで!なんで解けないの!もう悪いことしないから出して!・・・お願い」
今にも泣きそうな顔で、発した声は誰の耳にも届かなかった。
一年後
「うふふ、そうなんだ。今度私も行こうかしら。そういえば、私最近始めたことが・・・」
そう言う彼女は紅茶を優雅に飲みながら、談笑していた。
もちろん封印が解けた訳ではない。彼女の前には誰もいない。それなのに楽しそうに会話をしていた。いわゆるエア友達である。紅茶も飲む仕草をしているものの手には何も持っていない。もし誰か見ていたら、痛い人認定されていたことだろう。
更に数年後
「・・・・・・」
彼女の目には光は無くなっていた。一言も発すること無く、焦点の合っていない目はどこかをジッと見つめていた。
もう封印されてどのくらい経ったのか、その時は突然起こった。
ここに来てからなんの変化もなかった空間に亀裂が走った。どうやら年月が経ったことで封印が脆くなったのだろう。
それに気づいた彼女は、目を見開き、亀裂のところに一目散で走り出していた。その亀裂は、人一人がやっと通れるような隙間だった。彼女は藁にもすがる思いで、その隙間を潜った。そして、目に光が差し、目を細める。目が慣れてきて少しずつ目を開けていく。そこに映ったのは外の世界だった。
自分が外の世界に出たのだと分かると、彼女は泣いていた。
「・・・やっと、やっと、外に、外に出れた。・・・出れたんだ。うっうわぁぁぁん。やった!やったよ!」
それから数十分泣き続けた。今回の出来事は彼女に忘れられないトラウマを与える形となった。
やっと落ち着いた私は、一つ決意をするのだった。
『今度は悪さをしないで、平和に生きる!』
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