「わかっている」と「わからない」

「私はあなたをわかっている」の言葉が


 有刺鉄線のように私の心を苛んで縛り付ける


 共感のような耳障りのいい優しさを


 素直に受け止めきれないこの身が悪いのか


「わかってくれる人がいてあなたは幸せね」


 ──本当に?


「わかっている」ということは もうこれ以上はわかろうとする努力を放棄することとは違うのか


 わからない


「わからない」ことが悪だとでもいうように


 今日もまた私は与えられるのだ


「私はあなたをわかっている」という言葉を──



〈後書き〉

 我ながら性格が悪いと思います。だけど、「わかっている」と言いながら押し付けられる相手の価値観に、すごく息苦しさを感じてしまいます。

「こんなに波長が合う人に初めて会った」と言われて困惑しました。そもそもみんな波長が違うわけで、何一つ同じ人なんていません。それでも相手に歩み寄ろうとするから、波長が近づくのではないでしょうか。「あなたのことをわかっている」というのは、言った本人は相手をわかろうとする努力をそこでやめてしまうから、相手に自分に合わせろと強要するように思えて仕方ありません。本当にわかっているのなら、そう言いながらも相手が嫌がることをするのはどうしてなのでしょうか。

「あなたをわかっている」という言葉は、実は怖い言葉なのではないか、そんなことを最近考えます……。

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