第5話 『捨て鉢くじら』 濱口 佳和さん

〇作品名 『捨て鉢くじら』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054918752439 


〇作者名 濱口 佳和さん


【作品を見つけた経緯】

 紹介者の自主企画「自信作が読みたいです」に参加して下さった作品です。


【作品の雰囲気】

 時代小説であり、「人の負の部分」に焦点を当てた内容です。よって、きれいなものや美しいものを求めている人には向かないかもしれません。ただ、逆にそれが人間らしくていいなと思いました。

 また感情的な部分が複雑ではありますが、「捨て鉢」(思うようにいかなくて自暴自棄になるという意)というタイトルに相応しい内容です。


【感想】

 こちらの作品は、正直心地の良い作品でもなければ、多くの人を魅了するような美しさも可憐さもない作品です。

 のっけから、なんとも失礼な紹介で申し訳ありません。しかし、この作品の良さはそこにあるので仕方がありません。


『捨て鉢くじら』は、人の心を捉えようとしている作品だなと思います。

 登場する内藤大八はろくでもない人間です。昼間から酒を飲んで遊女を抱くような生活をしていて、見目も大していいわけでもない。最初の登場シーンから寺の鐘楼に向かって用を足しているし、どこがいいのか分からないのです。


 しかし物語を読んでいくにつれて、彼がどうしてこんな風な生き方をしているのかが見えてきます。私は彼に少しばかり哀れみを感じましたが、考え方を変えて生きていたら別の人生もあったのではないかと思ったりもしました。ただそれは現代だからこそ考えることのできる思考であって、この時代では無理だったのかもしれません。


 大八の人生からは常に「諦め」というものがにじみ出てくるのですが、「おもん」という遊女に会うことで、彼は自身の行動に「意味」を見出します。それは最終的に「生きる意味」に繋がっていたのではないかと私は思いましたが、彼はそれに気づいていない。いえ、気づかないようにしていたのかもしれません。


 そして想像できた結末ではありつつも、そうではないことを祈っていただけに、虚しさを感じ、どこかにこの思いを綴っておかなくてはと思いました。

 すっきりするような内容でもなく、ただただ空虚な感じがするのですが、どうにも惹かれてしまう人間臭さが、ここにあると私は思います。


 適切な感想だとは思いませんが、そんなことを考えながら私は読みました。


 最後になりますが、私はあまり歴史が得意な人間ではないので、多分この作品の内容を半分も理解できていないのではないかと思います。歴史的背景を知っていたら、より面白く読めたのではないかと思いました。


 今日は『捨て鉢くじら』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。

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