10月 October

第7話 『おじいさんからのバトンパス』 三山 響子さん

〇作品名 『おじいさんからのバトンパス』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054921832992

 

〇作者名 三山 響子さん


【作品の状態】

 短編・完結済。


【作品を見つけた経緯】

 以前、三山 響子さんの『大どんでん返し』という作品を読んで面白かったので、次作も面白いのではないかと思い拝読いたしました。


【ざっくり内容説明】

 お話は、小学4年生の亜弥が転校してきたところから始まります。

「転校生」というだけで、最初は誰も彼もが彼女に興味を示していました。それが時間が経つにつれ、彼女は「転校生」から「同じクラスの生徒」へと変化していきます。

 大体その辺りで友人関係が構築されるはずですが、亜弥は大人しい性格もあって、クラスの女の子のグループに馴染めないでいました。

 一緒に休み時間や放課後を過ごす友達がいなければ、その時間はちっとも楽しくありません。仕方なく一人でお絵かきをしてその時間をやり過ごしていましたが、ある日「めぐちゃんの誕生日パーティに行かない?」と、それに参加する女の子に誘われるのです。

 もちろん亜弥は「行く!」と答えますが、その後パーティを開くめぐちゃんにちょっと意地悪なことを言われてしまうのです。


【感想】

 短いのですが、良いお話です。心が温かくなります。

【ざっくり内容説明】だけを読んでしまうと、女の子のグループにありがちな陰湿なやり取りがあるんだなと思って、暗い話を想像してしまうかもしれませんが、この物語はその後が重要なのです。


 亜弥はその後、ある老人に出会うのですが、彼と話をしているうちに自分が「強い人」であることに気が付きます。

 仲間と一緒にいるだけで強くなったつもりでいて、人を傷つけるのは「弱い人」。一人で辛くてもぐっと堪えているのは「強い人」。


 これは今、一人で耐えている人の勇気になる物語であり、読んだ誰もが心がじんわりとあったかくなるようなお話です。


 今のご時世では、見ず知らずの人が声を掛けただけでも怪しいと思われてしまうことでしょう。それでも、この物語に登場した老人のように優しく諭してくれたり、傍にいて話を聞いてくれたりする大人が、子供たちの傍にいてくれればいいのになと思わずにはいられません。


 そして最後は、作者さんお得意のタイトル回収(「おじいさんからのバトンパス」)がされています。是非、その後の亜弥がどうなったのかまで楽しんで欲しいなと思います。


 本日は『おじいさんからのバトンパス』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。

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