ウートニキ・ノヅソナミの伝説(1)

海賊をテーマにした数多くの人気作がこの世にはあります。

世界を股にかけ、冒険し、戦い、財宝を手にする…いつの世も少年心をくすぐります。


しかし、これだけ多くの人に愛されるジャンルにあって、絶大な功績を残したにも関わらず、世に知られていない人物がいます。


ウートニキ・ノヅソナミです。


ウートニキは、世界で初めての、女性の海賊と言われています。

ノルウェー生まれの彼女には、様々な言い伝えがあります。

曰く魔法の粉で空が飛べた、曰く呪いの金貨で不死になった、曰く悪魔の実で手足がゴムのように伸びた…などなど。

その真偽のほどは定かではありません。

ですが、現代の海賊をモチーフにした作品の多くは、彼女の影響を受けていることでしょう。


さて、ウートニキを語る上で、外せないエピソードがあります。

それが、『ウートニキの秘宝』です。


ウートニキは、その一生の中で幾度となく、絶体絶命ともいえるピンチに陥ってきました。


遅刻しそうな時に限ってお腹を下したり、先生をお母さんと呼んでしまったり、体調不良といって会社を休んだのに居酒屋で上司に出くわしたり、忘年会で無理やりやらされたモノマネで死ぬほどスベったりしました。


しかし、『ウートニキの秘宝』に願えば、その全ては無かったことになりました。

そう、『ウートニキの秘宝』とは、自分にとって都合の悪い事実をこの世から消し去るという、時空間操作の魔法具だったのです。


私は、そんな『ウートニキの秘宝』に魅せられ、財宝探しの旅に出ました。


何のあてもなかった私は、とりあえずウートニキの生まれ故郷であるノルウェーの都市、ベルゲンへと向かいました。


カラフルな建物と豊かな大自然に彩られるベルゲンは、その美しいたたずまいだけで訪れる観光客を魅了します。


当初の目的も忘れ、ベルゲンの街に流れる穏やかな時間を満喫していた私は、3日目の夜にふらりと立ち寄ったバーで、とある噂を耳にしました。


なんでも、ベルゲンのどこかに、ウートニキの子孫である老婆がひっそりと暮らしている。その老婆が、『ウートニキの秘宝』のありかを唯一知る人物なんだとか。


思いがけず有力な手がかりを得た私は、その老婆を探すことにしました。

そして、なんやかんやあって見つけました。


老婆の住まいは、ベルゲンのはずれ、鬱蒼と茂る森の中に、ぽつんと建っていました。

まさに隠れ家というべき、所々が朽ちかけた古い木造の家です。


老婆は、突然の異国からの訪問者を煙たがりながらも、土産の東京バナナを渡すと、渋々私を家に招き入れました。



「あんたも『ウートニキの秘宝』を探しに来たのかい」


はい、そうです。


「消したい過去でもあるのかい?」


中学生の頃、右眼の邪眼の封印が解けてしまって。それ以来同級生から『じゃがん』と呼ばれています。


「情けない男だ」


返す言葉もありません。


「いいだろう。秘宝のありかを教えてやっても良い。ただし、に勝てたらね……。ひひっ…。負ければお前は、一生かけても到底返し切れない、莫大な借金を抱え生きることとなる…」


そ、そのゲームとは、一体…?


「『桃鉄』だ」




つづく

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