9話 突然の出来事
はっきり聞いてみよう。聞いてみなくちゃ分からないこともあると思う...。ほんの少しの希望にかけて聞いてみる。
「弟子にはなりたいです。ですが教えていただける場所はどこになるのでしょうか?」
「そうだね~。ここでやりたいって言いたけど、それはクリスくんの冒険の妨げになってしまうと思うから、これを渡しておくよ」
そう言われて渡されたのはブレスレットだった。
「これは?」
「魔道具だね。魔法を使う時の暴走を抑えてくれる道具かな。それはわたしが作ったものだからそれを身に付けていたらクリスくんがどこにいるかわかるんだよね。だから練習の時にテレポートでそっちに行くっていうのはどうかな?」
パーティを抜けなくてよかった。一番理想的な形になってくれたことが本当によかったよ。
「あ、ありがとうございます。でもなんでそこまでしてくれるのですか?」
「それはね。クリスくんが私に似ているからだよ」
「似ている?」
「そう。無茶をしてしまうところ。自分の実力をわかっていないところ。そして剣術と魔法のどちらも使えるところ。だから少しでも手助けしてあげたいなって思ってさ」
「ありがとうございます」
俺とティーさんが似ている...。ティーさんが言ったところは俺と似ているかもしれない。でもそんな人ざらにいるだろう。それでも俺を選んでくれたことに感謝しなくちゃだな...。
「じゃあ私が今度暇な時にでもそっちに行くよ」
「わかりました」
「じゃあ今日は泊っていきな」
「はい」
一泊みんなとして朝になってすぐ家をでた。
「じゃあがんばりなよ」
「はい」
ティーさん・・・いや、師匠と話した後、みんなのところに行く。するとエルミナが泣きそうな顔で聞いてくる。
「クリスは弟子になるの?」
「そうしたよ」
「じゃあもう一緒に冒険できないの?」
「師匠がテレポートで俺のところまで来てくれることになったよ。だから一緒に冒険はできるよ」
「は~。よかった...」
「心配かけてごめん」
「ううん」
みんなに報告したことだしオージラに帰った。オージラに着くとすぐギルドに報告しに行く。
「すごいですね...。本当にクリスさんは底辺職業なんですか?」
「世間一般的には底辺職業ですね。俺はそうは思っていませんけど...」
「職業以外の話も聞きました。闘技大会でもベスト8とかなんですよね? もしかしてクリスさんって本当はすごい人?」
「普通だと思いますよ」
「普通じゃないですよ!」
受付嬢と雑談をしていると、エルミナとルビアが話を区切ってきた。
「雑談はいいので早くクエスト完了を言ってください!」
「そうね。これでクリスくんとルビアさんはDランクに上がったわよ」
「ありがとうございます」
俺がお礼を言ったところで師匠がやってきた。
「言い忘れていた。やるのは週に2日ね」
「あ、はい」
「それよりもクリスたちは冒険者なんだよね? 今どれぐらい?」
「Dランクに上がったところです。ノアだけがCランクですね」
「ふーん。ちょっと待ってな」
師匠がそう言うとギルドの奥の部屋に行き、ギルド長に呼ばれる。
「えーと。クリスだっけ? 君たち全員いまからCランクの試験を受けてもらうよ」
「え?」
「ティー様に説得されたら断れないし、闘技大会ベスト8なんだろ? 実力は示しているしいいと思うぞ。他のやつもだ。上級職業でクリスについていけているんだろ? だったらみんなCランクになるためのクエストは受けなくていいから試験を受けてみろ。それで合格ならCランクにあげてやる」
「は~。分かりました」
「まあせいぜい頑張れよ」
「はい」
そう言ってギルド長が奥の部屋に戻った。それとすれ違いで師匠がやってきた。
「推薦しておいたから頑張ってね」
「はい...」
「弟子になったんだからこれぐらいはやってもらわなくちゃね」
「わかりました」
師匠がテレポートで戻ったのを確認して俺がエルミナとルビアに伝えに行く。
「午後からCランクの試験だって」
「え? なんで?」
「師匠が推薦してくれてCランクになるためのクエストは免除してくれた。だから今日試験を受けて受かったらCランクだってさ」
「は~。本当にいきなりね」
「ですね。緊張します」
(俺もだよ...)
試験だけならいいさ。でも不出来なことをしたら師匠に怒られるしな...。この試験で実力を証明しなくちゃだよな...。
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