19話 闘技大会 本戦4


 会場に入るとすでにアーサーさんが待っていた。




「君が噂のダークホースだね」




「ダークホースかどうかは分かりませんが、アーサーさんに知っていただけていて光栄です」




「そりゃあ本戦出場者はみんな知っているさ。お互い良い試合にしよう」




「はい...」




 この時はまだわかっていなかった。この人の恐ろしさを。




 試合の開始の合図がされた。




「じゃあ行くよ」




 そう言うとグランドクロスが飛んでくる。斬撃に魔法が組み合わさっている聖騎士特有の魔法。極めれば極めるほど威力は強くなり、巨大化なる。




 最初から本気で行かなくちゃ負けると考えていた俺は魔法無効化を使う。昨日の試合でアイディアを思いついたのでぶっちゃけ本番でやってみる。




 グランドクロスが俺の剣にあたると消滅する。




(やった)




 今までは手で触らなくちゃ魔法を無効化できなかった。それだとどうしても隙を見せてしまう。だから昨日の試合で剣に魔法無効化ができないか考えていた。家に帰って少し試したがなんとなくできていたが、本番でできるとは思っていなかった。戦う前はよけることを考えていたが無理だ...。




「これを初見で防ぐとはやるね。じゃあ行くよ」




「え?」




 俺が声を上げると同時に場外付近まで突き飛ばされる。何か魔法を使ったとかではない。ただ体術でここまで来て蹴り飛ばされただけ。




 早くて見えなかった。俺はすぐさま身体強化とラウンドを使い、近接戦の体勢をとる。するとグランドクロスが飛んでくる。まだ剣に魔法無効化付与すると他の魔法が使えなくなる。それを見越してか俺がグランドクロスを消滅させると同時にまた蹴り飛ばされる。




 このパターンを数回繰り返された。でもグランドクロスを受けると蹴り飛ばされるよりも大ダメージを受ける。何度も蹴り飛ばされるとこちらの体力もなくなる。




(どうする?)




 そこでやっと頭を使えた。俺は預言を使う。




{ここからサポートを頼む}




{わかったわ}




 ノエルと一緒に戦うことをなんで思いつかなかったんだ。昨日一緒に戦おうって言ったのに...。そこで試合が始まる前を思い出す。




「お互い良い戦いにしよう」




 この言葉を聞いて俺は預言を使うって考えよりもグランドクロスをどう対処するかを考えていた。そしてハメ技。はっきり言ってここまでやられてやっと思いつく俺を恨む。




 預言を使ったことによりグランドクロスを避けられるようになり、身体強化とラウンドで接近戦にもっていく。




「僕に接近戦で挑むなんてね」




 アーサーさんがそう言いつつ接近戦をする。はっきり言って分が悪い。それでも接近戦でしか勝ち目はなかった。次距離をとられたらグランドクロスを避けられるかわからない。ならここで...。




 俺はノエルのアドバイス通り痹動ニールを使う。すると運よくアーサーさんにあたってくれる。それを逃さず高速ウィップを使い後ろをとる。そこでやっと一撃を食らわせることができた。




「この試合で傷を受けるとはね。驚いたよ」




 最初からノーダメージで勝つつもりだったのか...。でもそれだけの実力差はあるか。その後もノエルの指示通りに動き、何度かダメージを与えることはできた。そして一瞬隙ができたと思った時、俺が独断で動くとノエルが叫ぶ。




{引いて!}




{え?}




 そこで今まで見たことのない速さで剣を振り直撃する。




(あ、やばい。このままだと死ぬ...)




 そう思った俺はエクストラヒールを使う。普通なら状態異常回復のためだろうけど、そんなことは言っていられない。みるみるうちに傷口は回復したが、すべてが回復したわけではない。この状態なら勝てないな...。そう思い俺は降参を言う。




「降参します」




「勝負あり!」




 司会者の合図で試合終了。そこで俺は気が緩み意識を失った。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る