18話 闘技大会 本戦3


 闘技大会本戦2日目。俺の試合は...第2試合か。第1試合はノアさんの試合。対戦相手は去年の準優勝者---ハリソン・ポールか...。お互い大変な人と当たったな。




 第2試合のためエルミナとルビアさんと一緒に見る。




「どっちが勝つと思う?」




「まあ普通に考えたらハリソンさんだろうな。でもノアさんも強いしわからないと思うよ」




「クリスから見てノアって人はどれぐらい強いの?」




「うーん。お互い本気で戦ったことがないからわからないけど、俺が本気を出して倒せるかどうかだろうね。剣術や体術、身のこなし方は俺と違って土台ができている。だから近接戦になったら俺は勝てない」




「じゃあクリスがノアと戦うとしたらどうやって戦う?」




「近接戦だと勝てないからまずは魔法を使って近寄らせないようにする。それでも近接戦になるのは目に見えているから、ノアさんにどうやって意表を突いて倒せるかを考えるね。もし接近戦になったら消耗戦になるからね。俺は魔力が尽きたら終わり。ノアさんは俺の力を見破れなくて、意表を突かれたら負け。どっちが早く攻略できるかだと思うよ」




「そっか」




 本戦でもし当たったらって考えておいたからすぐ答えられた。でも本戦で当たるとしても決勝だし、現実的に見て無理だろうから考えた意味がなかったな。




「クリスさんはいつも戦う前に相手のことを考えて戦いに挑むのですか?」




「そうですよ。でも1回戦みたいに対戦相手やモンスターのことが分からないことが多いです。なのでめったにしませんけど」




「そうなんですね」




 何やかんや3人で話している内に試合が始まった。ハリソンさんは魔剣士のため近距離、長距離どちらも戦えるオールラウンダー。それをどうやってノアさんが崩すか見ものだな。




 最初はお互いが様子見をしている。戦いをしたことがない人なら何の意味もないと思っているだろう。でもそうじゃない。相手の間合いを探ったり、相手の癖や特徴、どうやって攻めてくるかを見ているんだ。剣士同士の対戦なら大抵この様子見で実力が分かる。




 そう思っているところで均衡が崩れる。まずハリソンさんが竜巻を2つ出す。1つはそのままノアさんの方に向かっていく。そしてもう1つの竜巻に炎の玉を入れて火災旋風を作る。ノアさんは1つ目の竜巻をかわして、2つ目の火災旋風をグランドクロスで無くす。




(やっぱりグランドクロス使えたんだな...)




 そしてお互い間合いを詰めて鍔迫り合いをする。やっぱり接近戦ではややノアさんの方が有利のため、ハリソンさんの体に傷がついていく。




 接近戦を3分ほどしたところでハリソンさんは後方に下がりまた竜巻と火災旋風を使う。さっきと同じように竜巻はよけて火災旋風をグランドクロスで相殺する。その時ハリソンさんが一瞬で消えた。




(え? なにがおこった?)




 なぜかノアさんの前にいたハリソンさんが切りかかりチェックメイト。




 何が起こったんだ? 見えなかった...。ちゃんと見ていたと思う。それでも見失うってことは...。最初は高速ウィップだと思った。でも高速ウィップではここまで早く動けない。だとしたらなんだ?




 会場に司会者が入って来てインタビューが始まる。




「ベスト4おめでとうございます!」




「ありがとうございます」




「最後消えたように見えましたが何を使ったのですか?」




「それは秘密です」




「わかりました。では準決勝でも頑張ってください!」




「ありがとうございます」




 秘密か...。まあ教えてくれないよな。俺が同じ立場でも教えないし。でも本当に何を使ったんだ? 生きてきた中であんなに早いのは見たことがなかった。それほど印象的で恐怖を感じた。




「次はクリスだね!」




「頑張ってくださいクリスさん!」




「ありがとう」




 2人に見送られて行こうとしたところでマックスさんがちょうど俺たちのところに来て言う。




「次も頑張ってくれ」




「はい、ありがとうございます」




 一応は応援してくれるんだな。みんなに応援されているんだし変な負け方だけはできないな...。そう思いながら闘技場に向かった。

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