第11話
「失礼します。あ、葉山、と?」
「あ、海君!こちらが昼休み話したアキちゃんです!」
「初めまして、だよね!春風亜希と申します!
よろしくお願いします!」
「あ、ああ初めまして。佐伯 海です。こちらこそよろしく」
教室に入ると、二人の美少女がいた。昼休みに話した後、放課後、クラスに寄ってくださいといわれ来てみると、葉山と陽一の幼馴染みの春風さんがいた。
「へぇー、君が菫の彼氏の佐伯君?」
「ああ、一応彼氏です」
「一応じゃありません。れっきとした彼氏です!」
「いやー、菫の方がゾッコンな気がするなー」
「そうです!私が世界で一番海君の事を愛しています!」
「い、いいから本題に入ろう」
これ以上聞いていると俺の体力が持たないので、早速本題に入ることにする。
「アキちゃんに単刀直入に聞きます」
「ん?なになにー?そんな改まって」
「アキちゃんは幼馴染みの澤井さんの事をどう思いますか?」
「えっ何で陽一が幼馴染みって知ってるの?!私話したことあったっけ?!」
「まあ、そこは色々……」
はっきり陽一があなたの事を好きと言っていた何て言えないからな。色々伏せて話しを進めないと。
「陽一のことかー。そうだなー」
「喋れるところだけでいいぞ?無理強いしているわけでもないから」
「うーん、この年まで幼馴染みとしていると、関係に変化が起きづらいんだよね」
あははと苦笑気味に笑う春風さん。
実際にその通りだと思う。俺には幼馴染みはいないため、詳しいところは分からないが、長く同じ人と関わっていると、自然と関係が変わってくる。
俺と陽一でいえば、友達から親友。長い期間関わっていた訳ではないが、俺と葉山でいえば、知り合いから彼氏彼女の関係に変わった。
この変化の厄介なところは、自分一人では変えることが出来ないというところだ。
友達でも浅い関係ならば、ふとしたところで友達という関係すら終わってしまう。
付き合うという行為は、お互いにある程度の好印象がなければ成立しない。
春風さんが今の関係から変わりたがっているのか、そうだとしたらどのような関係になりたいのか聞く必要がある。
「春風さんは、陽一とどういう関係になりたいんだ?」
「……見かけによらずストレートに聞くね。佐伯君」
「それぐらいしか取り柄がないもので」
「いえ!海君の取り柄なら何個でも言えますよ!」
「オーケー、一回落ち着こう葉山。……話しを戻して、どうなんだ?」
「……そりゃ付き合えるなら付き合いたいよ。けど、その勇気がないからここまで引っ張ってきたんだよ」
「……つまり陽一と付き合いたいっていうことだよな」
「……うん」
「それなら話しは早いです!何故なら陽一さんも」
「葉山」
「え?」
「それ以上は言っちゃいけない」
「?何の事?」
「ああ、こっちの話だから気にしないでくれ。とにかく今日はありがとう。葉山、行くよ」
「は、はい。アキちゃん、また明日」
「また明日!じゃ~ね~!」
俺たちは春風に挨拶をし、教室を出る。
「か、海君、私なにかしましたか?」
不安そうに聞いてくる葉山。
「違うよ、葉山。大丈夫。あそこで陽一の春風さんへの好意を伝えようとしたのは葉山自身の優しさだと思うから」
「えっ、じゃあ何で」
「俺たちはあくまでもサポートをするだけ。ここで好意を伝える必要はないよ」
「でも」
「大丈夫だよ、葉山。どちらもまだ勇気が無いだけで、現状を変えようという気持ちはある。その気持ちさえあれば、あの二人なら大丈夫だから」
「……そうですね!親友を信じない方がダメですね!」
俺たちはサポートをするだけ。全てを伝える必要はない。
俺たちは帰る支度をし、一緒に帰ることにした。
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