半魔
はっとりおきな
序
「半魔」
「いやァぁぁああ゛あ゛あああアッ!!!」
空気を
ビグン、ビグン、と
女性の首はまるで別の生物であるかのように
涙が
――――血に
「ヒ……ヒディル様、これはっ……?」
「……この状況は何なのですか、
鋼を基調に、金の縁取りが
彼は
視線の先には、
「……。出産だよ」
「そんなことは見れば分かります。私が
ヒディルの声に合わせるように、どこかで巨大な生物が息の
ヒディルの傍らにいる金髪の青年が
その無機質な空間は、生体実験室という名の
まかり間違っても、人間の出産が行われて良いような場所ではなかった。
――――力の限り
母体が再び悲鳴を上げる。
その声が
母体は生まれ出でようとする我が子に――――
「いつまで黙っているつもりですかッ! この国の頂点、
「これは後ろ暗いことではないよ、エクター君。痛ましくはあるがね」
「後ろ暗くないと
「
血気にはやる金髪の青年――エクターをヒディルが制する。
ヒディルの腰の飾らない
教皇は「よいのだ」と一言置き、再び口を開く。
「エクター君の言う通り、出産が実験室で行われることなど無い。これは出産ではなく『実験』なのだ。大丈夫、母体は十分に
「貴様等――まさか人体実験を行ったと!!?」
「エクター。……教皇。彼女はもしや――」
「本来、人間と
――――背後には、獣の
「…………待ってください教皇っ。その言い方はまるで、」
「エクター君。そしてヒディル」
教皇の、そしてヒディルの目が、ゆっくりと母体へ向けられる。
「よく見ておきなさい。人間と――」
――――雷鳴。雨。木々の
――――血だまりに映るのは、
「ァああああぁああ゛あ゛あッッッ!!?? あぁあ゛あ゛あ゛あ゛ッッ――――!!!」
――――巨大な口から
「
「教皇、とするとこの女性は
「そうだ。
「何故その場で殺さなかったのです!? 魔物かもしれない者を産み落とさせるなど人道に――」
「あと少し」
――――その姿が嫌で嫌で嫌で、嫌で。でも、
「この
「教皇の仰る通りだ」「我々は勝利しなければならない」「あの母体はその為の犠牲じゃて」「そんなことも解らんのかあの
「っ……」
――――でも、食べないといけなくて。
「あ゛a゛ッ゛ッ゛ッッ――――!!!!!!」
『!!?』
無機質な鉄の空間にいる全員が、ガラス窓の向こうにいる母体へと目を向ける。
母体は
「……
――エクターの声は、胎盤を突き破る
その手はヒディル達が――――人間達が最も見慣れた赤子の手。
赤黒い胎盤を破り、母体の肉と血にまみれて転がり出てきたのは人間の赤ん坊だった。
「――――……」
誰知らず、
次いで聞こえ始めたのは
赤子は床を赤黒く染めながら、へその
教皇。これで心配は
そうヒディルが発しようとしたときだった。
赤子の顔が、体が――――ぐにゃりと
「な――」
絶句するエクターの眼前で、赤子は
骨ばった体。
ぼこりとした
枯れ枝のような手足。
小さな
――――そんな醜悪な姿で。
「……常々思っていたのだ。
「――――――『
教皇の言を次ぎ、ヒディルがつぶやく。
そして、
「殺せ。ヒディル
その命令は、最高統治会により下された。
「見よ、さも我等人間の子のように泣き叫びおって」「なんと恐ろしい……」「見るのも汚らわしいわ」「呪われてしまう、おおお」「見るに堪えぬ、騎士団長ッ! いつまで突っ立っておるのだ」「
泣き声は。
命令は。
ヒディルの
――――
――――美味なる肉が、
「…………早く…………」
――――涙と唾液と血の液だまりの中、その低い声で。
――――闇を斬り裂き、
「――――早ク人間ニなりタあぁァ――――――いッッ!!!!!!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます