第140話 ゲスモブ、イジメを目撃する
「なんか、学校が荒れてるらしいよ」
オンライン授業が終わった後、ファミレスで待ち合わせした清夏が意外な話をし始めた。
俺達が異世界に召喚されてから、学校が荒れ始めているらしい。
「荒れるって、イキりヤンキーがオラついてたりするのか?」
「そうみたい。女子もイジメが増えているんだって」
異世界から戻った後、復学の手続きで学校には行ったが、その後はオンライン授業なので校舎には足を運んでいない。
正確には、田沼と斉木を帰還させた時に屋上には行ったが、表には出ていないし、二回とも休日だった。
「でも、なんで俺達が異世界召喚されたら学校が荒れるんだ?」
「聞いた話だと、徳田が居なくなったからじゃないかって……」
「はぁ? 徳田ぁ?」
「だって、日本に居る時は学校〆てたじゃない」
「あぁ、一番強い奴が居なくなって、勢力争いみたいなのが起こってんのか」
徳田の野郎はムカつくが、確かにヤンキーの間では実力的に抜けていた。
口先だけのハッタリ野郎とは違い、格闘技ガチ勢の徳田に対抗できる奴などいなかった。
その徳田が居なくなれば、頭の弱いイキりヤンキー共が、我こそは最強……みたいな争いを始めるのは当然の流れなのだろう。
「でも、イジメが増えてるのは何でなんだ?」
「これも聞いた話なんだけど、徳田がダサい真似してんなってイジメを止めてたらしいんだ」
「はぁ? 徳田が? 居なくなったせいで美化されすぎなんじゃね?」
「まぁ、あたしもイジメには関わって来なかったから、良く知らないんだけどね」
「でもさ、女子のイジメとか凄い陰湿ってイメージあるけど、実際どうなんだ?」
「陰湿だって話は聞くね。脱がして写真撮ったり、自慰行為を強要されたりとか……」
「聞いてるだけで、胸クソだな」
「うちの学校がどうだったのか、今どうなってるのか知らないけどね」
清夏が言うには、陰湿なイジメは絶対に表沙汰にならないように、場所を選び、メンバーを限定して行われるらしい。
そんなグループに引き込まれれば、絶対にロクな事にならないので、清夏は上手く立ち回ってメンバーに近付かないようにしていたらしい。
というか、召喚される前の清夏は、典型的な黒ギャルだったので、女子のイジメグループからも手出しすれば報復がヤバそうだと思われていたようだ。
「じゃあ、今は陰湿なイジメが学校で行われてるのか?」
「噂ではね」
「場所は、女子トイレとか?」
「うん、西校舎三階の女子トイレらしい……」
「そんな噂になってるなら、教師も何とかしろよ」
「見張りを立てて、絶対にバレないようにしてるらしいよ」
「見張りねぇ……俺らには関係ないけどな」
「見に行くの?」
「積極的に見たいものじゃねぇけどな……」
実際、俺にイジメ問題を解決する責任なんか無いが、胸クソ悪い連中を野放しにしとくのも気にいらない。
なので、アイテムボックスの能力を使って清夏と一緒に、昼休みの女子トイレを確認しに行くことにした。
噂になっている西校舎三階の女子トイレの入口を見張っていると、いかにもな女子グループが姿を現した。
「こいつらか?」
「たぶん……学年違うから分からない」
「俺らの下か……てか、あれって格好良いと思ってんのかね?」
「思ってるんじゃないの、本人達は」
現れた女子の一団は、一人を除いて全員が髪を明るい茶髪に染めて、制服をだらしなく着崩している。
一人だけ黒髪の陰気そうな目隠れ女子が、おそらくイジメのターゲットなのだろう。
西校舎のトイレは建物の端に在り、階段から離れている。
間にある教室は視聴覚教室なのだが、コロナ禍
廊下に一人見張りを残して、目隠れ女子を含む五人はトイレの中へと入って行った。
「おら、さっさと出せよ!」
「も、もうお金無いです……」
「嘘ついてんじゃねぇ! さっさと出せ!」
廊下からトイレに入った途端、ヤンキーどもは金をせびり始めたのだが……見るに堪えない醜さだ。
「脱げ。本当に金持ってねぇか確かめてやっから、脱げ!」
「い、嫌……」
「ああぁ? また痛い目に遭いたいのか?」
あまりにもテンプレな展開で、呆れかえってしまう。
「ねぇ善人、撮影するだけでいいの?」
俺達は、目隠れ女子を脅しているクズ女の斜め後方から状況を見守っている。
壁と天井の角の部分から、スマホで証拠撮影も行っているが、クズ女どもをどうするかまでは決めていない。
「後で考える」
「でも……」
「証拠も押さえる必要があるからな」
「分かった」
清夏とすれば、目の前で行われているイジメを止めて欲しいのだろうが、踏み込んで行けば、俺が魔法を使えるとバレてしまう。
それに、言い逃れできない証拠を押さえておく必要がある。
とは言え、それから昼休みの時間いっぱいを使って行われたイジメは、俺でも目を背けたくなるものだった。
下着まで脱がせ、自慰行為を強要し、自分らが小便をしたままの便器を舐めさせ、髪の毛を掴んで顔を突っ込ませて水を流した。
一連のイジメ行為が終わった後、俺は廊下側からイジメに関わった全員の顔を撮影しておいた。
これで、名前も素性もわからなくても、アイテムボックスの力を使えば本人の所に辿り着ける。
ターゲットは五人、じっくりと料理してやろう。
その前に……。
「復元!」
髪はグシャグシャに濡れ、全裸で泣きじゃくっている目隠れ女子をトイレに入る前の状態に復元した。
記憶まで消してしまったので、状況が把握できずに戸惑っているが、あんなクソな記憶など無い方が良いだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます