第8話天罰

「申し訳ありません、舞姫様。

 貴女様を追い出してまで権力を手に入れたのに、こんな事になってしまいました」


 ジプシーの踊り子が私の前で叩頭しています。

 心から私に詫びているのが分かりますが、私は全然気にしていません。

 あの腐りきった王国を正して操るなど、絶対に不可能だと分かっていました。

 普通に作物が実っていても、驕り高ぶった彼らの遊興のために、多くの税を奪われて、民は生きていけなくなっていました。


 それが、私を追放した事で、歴史的な凶作になり、人口も激減したのですから、民への収奪は想像を絶するモノになりました。

 私も救いの手を伸ばしましたが、助けられたのは十万人程度でした。

 この状況では、それでなくても差別されているジプシー達が、踊り子が王太子の心を掴んでいようとも、暴行略奪の標的にならない訳がないのです。

 いえ、聖なる舞姫の座を奪っているので、全責任を負わせられたのです。


 踊り子が王太子の心を掴んで以降、大陸中のジプシー達が、差別を逃れようとこの国にやってきましたが、この状態では怒りのはけ口になるだけでした。

 このまま虐殺されるのを見て見ぬ振りもできないので、オアシス都市に逃げてくるように誘い、このような状態となりました。

 結局オアシス都市には、元々の住人十万人と、ジプシー達十万人がいます。

 もし私がいなければ、ここでも殺し合いとなっていたでしょう。


「気にする事はありません、こうなる事は神様が定められた事です。

 この国を治める者たちは、神様を蔑ろにし過ぎたのです。

 もう天罰が下っている頃でしょう」


 神々の怒りは激烈で、今王都に集まっているオアシス都市侵略軍は、悲惨な死を迎える事が決まっています。

 神々が差し向けられた、疫病を持ったネズミの群れに襲われるのです。

 最初に激烈な痛みを伴う上げ下しに襲われ、我慢する事などできずに、衣服を汚し恥をかくことになります。


 絶え間ない痛みと上げ下しで、とても起きていれない状態になったところに、神の遣わしたネズミの襲われ、少しずつ身体を喰われて死んでいくことになるのです。

 その痛みと恐怖感は想像を絶するものがあります。

 考えてみてください、生きたまま目を喰われるのです。

 生きたまま腹を喰い破られ、直ぐに死ぬ事もできずに内臓を貪り喰われるのです。


 その恐怖と痛みは、神に救いを求めずにはおられないでしょうが、その時に神はこれが天罰であり、未来永劫この激痛地獄を続くと伝えるのです。

 その絶望は、人間の正気を失わせるほどのものでしょうが、神々の怒りはそんな楽を御許しにはなりません。

 まあ、そんな事は私が考えても仕方がありませんね。

 私が考えなければいけないのは、この国に元から住んでいた人とジプシーの融和。

 大変な仕事ですが、舞姫が逃げるわけにはいきません!

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聖なる舞姫は婚約破棄追放を心から望む 克全 @dokatu

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