37話・王達の動き(リード視点)

「まったく、二人とも大変なことをしてくれたな……」


 静かに、けれど怒りを隠せない低い声が謁見室に響く。王の眉間には幾筋もシワが浮かんでいる。


「予言に従い、大魔法使いの子を見つけ保護してきたというのに……」


 玉座にある飾りを手で握りながら、呟く。

 もう一つの予言。王宮の一部の人間にだけ伝わっている破滅の予言とは別の話だ。


 ――大魔法使いの子孫がこの国で生き続けている。その血を絶やすことなかれ。運命の子が産まれる為に。


「聖女が産まれると思いきや、獣人の王子……。無駄に争いが産まれただけであったな……」


 王は大きく息を吐きゆっくりと目を閉じた。


「アルレイクは、地下牢で――。ミンネが聞けば悲しんだであろうが、あやつを想う家族はすでにいない。大魔法使いの子孫はアリストだけになってしまったか」


 アリスト様の亡くなった母、ミンネ様。その兄アルレイク様の復讐の計画は失敗に終わった――――。ミンネ様を捨てたと勘違いとすれ違いからの……、復讐劇。

 王の呟きを私は聞き続ける。


「あちらが本物の聖女であったようだな……。これでは、カトルの継承は――。あの娘に執着し続けてしまう様ならば」


 それ以上は、口を閉ざし、考え込む王。私は彼から言葉がかけられるまでじっと待っていた。


「リード、次にルードに連絡がついたならば聖女をカトルにつけるようにと伝えておけ」

「――はっ!」


 それはつまり、カナ様はリサ様が戻れば用なしであるということなのだろうか……。

 それならば、カナ様をもとの世界に帰すことが。


 だが、それは出来ないことかもしれない。二人ともあの召喚魔法でここにきたのだから、戻す魔法を使ったのなら、二人が、ともに元の世界へと帰ってしまう可能性が高い。

 どうすれば、彼女を元の世界に帰してあげられるのだろう。


 私はルードに連絡をとるために、マリョククイのいる場所へと向かう。


 けれど、その日から、何度か試みてはみたがルードに連絡がつくことはなかった。

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