34話・話す
「カナ様! 大丈夫でしたの?!」
「はい」
久しぶりに、メリエルに会えたのは次の日だった。
「よかったですわ。カトル様が、カナ様の安全を確認出来るまで閉じ込めるなんて言い出して、本当に心配しておりましたの」
「カトルはそんな事を……」
「私も色々と確かめられてしまいましたわ。でも、カナ様に危害を加えるつもりなどないとわかっていただけました。ただ――」
「何か……?」
「アリスト様の叔父上様が――」
そこまで言って、メリエルは言葉を止めた。
「カナ様には関係のない話でしたわね。さぁ、お茶にしましょう。中庭で、ピクニックのように致しましょうか」
そう言いながら、彼女は私を引っ張って行く。その後ろを守るようにリードがついてきた。
「水の精霊の国にいるそうです。彼女達は帰らないと言って、いまもまだルードは追いかけているそうですわ」
紅茶を飲みながら、メリエルが言うのはきっとリサさんのことだろう。何故、何処にいるかわかるんだろうか。
「ラーファに付いている通信石の力です。ルードとリードの魔力で話が出来るのですけれど」
顔に出ていたのか、メリエルが説明してくれた。
「マリョククイの体についていないと使えない物で、しかもマリョククイの機嫌で話せなくなったりもする不安定な代物ですの」
クスクスと彼女は笑う。
「おまけに同時に魔力をこめないとなので、ね――」
どちらかが、とらなければ話せない。まるで電話みたい。
「その、マリョククイって?」
「あぁ、ごめんなさい。えーっと」
「カナ様、ルードが乗っていった大きな鳥です。魔力を食べて大きくなるのでマリョククイと」
リードが説明してくれて、思い出した。
「あの白くて大きな鳥ですか。でもたしか、あの鳥はラーファと聞いたような」
「はい、名前がラーファです。あとお城にはもう一匹、黒い鳥がいますの。そちらはガーブ」
「戻ってこない場合、私がガーブに乗って追うつもりでした。……何者かに、体内に魔法の力がこめられた何かを埋め込まれたような痕跡が見つかりまして」
「危険だと判断して、城で待機になっていますの」
じゃあ、リサさんは連れ戻されていないのね。よかった。
メリエルを見ると、にこりと笑っていた。
もしかして、皆で誤魔化してくれてたりするのかな。
もしそうなら、ばれないようにしないと――。協力してくれている皆が、傷つけられないように気をつけないと。
アリストの叔父という話も気になるけれど、あまり首を突っ込まない方がいいと思った。その為に彼女は話を止めてくれたのだから。
私も、空をゆっくりと眺めながら紅茶を口に含んだ。
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