13話・魔法に必要な魔力

「魔法講義ですか」

「あぁ、そうだ。昨日、会っただろう」


 そう言って、彼の前につれてこられた。たしか、水晶を持ってきた人? 名前は……


「ルードです。よろしくお願いします。カナ様」


 そう言ってお辞儀をした。この前はフードを被っていて見えなかったけど、格好いい顔立ちで男の子アイドルみたいだった。目の色が、右と左で違うのにはびっくりした。


「よろしくお願いします。まだわからないことだらけで」


 そう言って私もお辞儀をする。


「本当は私が教えたいんだけど、魔法の才能がからきしでね。すまないが彼から教わってほしい」

「わかりました」

「ルード、お願いするよ。私は仕事を片付けてくるから」

「はい、殿下。おまかせください」

 カトルは私と彼をおいて行ってしまった。


 ーーー


「~でして、~から」


 何よ、これ。


「~~が、こうなって~~」


 学校の授業より、ちんぷんかんぷん。精霊学? 魔法学? 全然意味がわからない。

 これ、頭に一ミリもはいってこないわよ。先生失格じゃない?


「~~です」


 なかなか、終わらない話に辟易していると、途中でルードが止まった。


「すいません。カナ様、長くなってしまって」

「あ、いえ。大丈夫です。頑張ります」


 ぱっと、顔が明るくなってまた意味がわからない言葉を続けだした。

 はやく、終わってくれないかな。


 ーーー


「それでは、やってみましょう」


 そう言われて、ハッとする。


「あ、えっと。なんて言えばいいんでしたっけ」


 ルードは、少しかなしそうな顔をして言った。


「使いたい魔法の精霊をよんで、頭の中で願いを叶えて欲しいとイメージするんです。例えばこんな風に」


「火の精霊よ」


 マッチの火みたいなものが彼の指先に現れる。


「あの、ライトに聞いた話と少し違うんですけど。名前をよんでと。昨日はライトと、言えば魔法ができたんです」

「それはきっと、聖女しか使えない魔法のことでしょう。普段我々が使う魔法は使いたい魔法の精霊よと唱えます」

「そうなんだ」


 じゃあ、さっき彼がやっていたように、魔法の火を起こしてみよう。


「火の精霊よ!」


 ポッと小さな火が指先に灯る。


「出来た」

「さすが、カナ様。お上手です。ただ、カナ様は魔力が少ないので、大きな魔法は使えないでしょう」

「そうなの?」

「はい、聖なる力を使う聖女の守護魔法こそカナ様だけに授けられた奇跡の魔法です。守護魔法を使うことだけを考えて下さい。魔力を使う魔法は、使いすぎると疲労で倒れたり、眠ってしまったりするので。カナ様は使わない方がよいかと」

「せっかく出来るのに?」

「はい、攻撃魔法は我々が行います」


 そういうものなのかしら……。なんだか、めんどくさそう。


「はい、わかりました」

「では、カナ様が光の精霊から賜った奇跡を見せてもらってもよろしいですか?」


 ライトが何か言ってたよね。守護と癒し……だったかな。じゃあ、守ってでいいのかな?


「ライト!」


 パキーンと硬質的な音がして透明なきらめくガラスみたいなものが現れた。

 ルードから感嘆のため息がもれる。


「素晴らしい! 流石です。完璧な結界です!」


 ガラスはぱきんっと、すぐに消えてしまった。


「カナ様、イメージし続けることが大事です。頑張って練習していきましょう!!」

「……はい」


 彼と私のテンションの違いに、とても疲れてしまった。

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