8話・聖女の契約へ

 私は中庭に連れてこられた。

 とてもキレイな花々が咲き誇っている。


「本当にいいのか? カナ」


 何? そんなに何度も確認しなくてもいいのに。どうせ聖女にならないとお話しが進まないでしょ。この人たちは私を聖女にして、滅びの予言から護って欲しいんでしょ? まるで、映画みたい。

 そう、映画やドラマのストーリーなんかは、問題解決さえすればハッピーエンドになるはず。きっとこの物語だって同じよね。ハッピーエンドにすれば、空から帰る道が現れたりするのよ。


「はい、大丈夫です。聖女になってみせます」


 うやうやしく、私はカトルに頭をさげる。

 カトルは、真っ直ぐに私を見つめてから、こっちだと手を引いていってくれた。

 大きな噴水がある。噴水に近づいて、カトル王子が何かを確認しながら、噴水近くの壁のとある場所で止まった。

 そしてたぶん鍵? みたいなのを差し込んでいた。


 カチャリ。ギギッ。


 扉が開いた。


「ここは?」

「光の精霊との契約の場だ。聖女はここで契約して、指輪を賜るんだ。地下に降りるから気をつけて」


 スッと手を出してくれたので、私はその手をとり、階段を下っていった。


 電灯もないのに、小さな光が暗闇をチカチカ照らして、不思議な場所だった。


 階段が終わり、少し大きな扉があった。

 カトルがまた先ほど使っていた鍵を取り出して、扉に差し込んだ。


 ギギィー。


 扉を開くと、小さな光がたくさん浮かぶキレイな花畑の部屋にでた。

 床には、この世界にきたときに見たような模様が浮かんでみえた。


「きたよ、きたよ! 契約の子」


 あの笑い声と同じ声が聞こえてきた。


「なるほど、この子か。でも本当?」


 なんなのこの声……。

 恐怖からカトルの手をぎゅっと握ってしまう。


「あの、さっきから喋っているこの声はどこから?」


 カトルがこちらを見てぎゅっと、手を握り返してくれた。


「大丈夫だ、カナ。その声は光の精霊だよ。聖女は精霊の声を聞くことが出来るんだ」

「精霊の声……」

「声が聞こえるということは、カナは聖女で間違いない。こっちだ。この魔法陣の中央に行ってくれるかい」


 カトルが手をはなす。


「ここからは私は入れない。ここで……、見ているから」


「……はい」


 一人で、一歩二歩と踏み出す。

 光の模様の上を歩いて、中央まで行くとまた別の声が聞こえた。

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