3話・涙

「ここ……どこ?」


 知らない天井。知らない壁や家具たち。


「目が覚めたかい?」


 この人、誰だっけ。私、さっき……?


 急に頭がはっきりしてきた。


「カトルさん。ここは?」

「カナの為に用意した部屋だよ」


 そばにあるテーブルにさっきまで眼を通していたのか、たくさんの書類がつまれていた。


「また、泣いてるね」


 そっと、手が頬に触れ、そのまま親指で涙を拭われた。こんな事、タツミには今までされたことなくて、戸惑う。


「あ、すいません。私、お話しの途中で、」

「無理しなくていいよ」


 頭をゆっくり撫でられた。カトルはとても優しく接してくれる。だけど、私は帰らないと行けない。だから、自分が置かれている状況を理解しなくちゃいけない。


「大丈夫です。お話し、聞かせて下さい」


 カトルは少し驚いた表情を浮かべていた。じっと、私の眼を見てどうするかを決めているようだった。


「……わかった。つらかったらいつでも止めてくれてかまわない。何度でも説明するから」


 こくりと頷く。私は帰るんだ。元の世界へ。タツミの元へ。

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