凛と夕菜の生きる道

霜花 桔梗

第1話 前世の記憶

「困ったのう……」


 わたしはおおババ様の社で真剣な眼差しで占いをみていた。長雨の後の干ばつで、この村は存亡の危機にあった。おおババ様は術円の描かれた床にまじない石を投げる。


「生贄が必要で出た。この社の跡継ぎである『夕菜』しか、その資格は無い……」


 おおババ様はわたしの名を呼び、言葉少なくなる。


「せめて、助けとなる、者を呼び出そう」


 術円に油を撒き炎と煙が立ち込める。着物姿の女性の姿が現れる。女性は精霊の類で『凛』と名乗った。長い黒髪に鮮やかな口もの紅の色、その姿は妖艶であった。


「おおババ様?この方は?」

「夕菜、お前の付き人だ、約束の生贄の日までそなたを守る存在じゃ」


 凛は大きな目を開き。


「我が主様、このわたくしめがお守りします」


 その言葉に迷いは無かった。このわたしは17歳になる。普通なら遊びたい年頃であるが。


 この社の為、更には平和な村を救う使命を与えられたのである。


 わたしの名前は『籠之宮 夕菜』普通の女子高生だ。しかし、大きく違う点がある。それは前世の記憶があるのだ。小さな村に生まれて17歳の時に生贄なり、その短い人生を閉じた。この街は都心のベッドタウンで平和な限りである。


 今日……その前世の記憶をたどり、守り人であった、凛の召喚を試そうと思う。


 わたしの前世の記憶は、皆から嘘つき呼ばわりされてきた。凛を召喚してわたしが正しいと証明するのだ。


 神社の裏庭で古文書から、術円を描き写して油を撒く。煙が身長を越えて立ち込め、凛のその姿を現す。


 おぉ、守り人の凛だ。


「夕菜様、我が存在はいったい?」


少し記憶の混乱はあると思われるが確かに凛だ。


「凛、ここは平和な時代だ。その召喚された存在、もう一度、わたしに仕えないか?」

「はい、わたくしめで良ければ、喜んで」


 長い黒髪を揺らして、わたしの手を取る。遠い前世の記憶は正しかった。わたしは家に凛を連れて帰り、家族に紹介する。


 それから、一緒に住むと交渉した結果。凛はわたしの部屋に住む事になった。

さて、学校だ。この難題は凜が自分で解決した。凛の潜在能力に環境適応があるらしい。


 公立の高校でもわたしのクラスに入れた。


 流石は凛である。


 友達に紹介すると、最初は目が点であったが、凛の存在感に負けて羨むようになった。


 ふむふむ、普通の女子高生に気高き守り人、これからの人生が楽しみである。

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