⑰魔王真緒は永遠に・ラスト〔了〕

 静寂した宇宙空間に浮かぶ、宇宙植物ヘキサゴン・デミウルゴスの大樹が根を張った小島のような丘小惑星の上に、魔王真緒と父親の魔王ダゾは並び座り、輝く星雲を眺めていた。

 父親の魔王がポツリと真緒に言った。

「元気だったか」

 少し照れ気味に答える真緒。

「うん、元気だった」

「また、壊しちゃったな裏地球」

「うん、壊しちゃった」

 魔王は、真緒の頭を優しくクシャクシャする。

「再構築で再生する時は、真緒の思い通りの世界に変えてもいいんだぞ」

 首を横に振る真緒。

「そんなコトはしない、同じ世界に再生しても。みんなが成長したり努力すれば変わっていくから……ボクが変える必要なんてない」

「そうか、大人になったな真緒」

 立ち上がる魔王ダゾ。

「もう行くの? 父さん?」

「あぁ、真緒が新しく作る世界が見たいからな……悪いな、世界を旅する父さんのワガママを許してくれ」

「気にしなくていいよ父さん、いっぱい色々なモノを見てきて」


 宇宙樹の後ろから、車輪つきの旅行カバンを引いた、真緒の母親が現れて言った。

「男同士のお話しは終わりましたか?」

「ああっ、終わった……じゃあな、真緒」

 そう言うと、ディバックを背負った魔王の父親は、飛び石階段の浮かぶ石を降りていった。


 今度は母親が近づいてきて真緒をハグする。

「真緒、いつも寂しい思いをさせちゃって……ごめんなさいね」

「ううん、みんながいるから、そんなに寂しくないよ……母さんからの手紙も、時々届くから」

「そっか」

「母さんごめん、誕生日パーティーできなくなっちゃった」

「いいの、元気な真緒とこうして会えて、お話しできたのが最高の誕生日プレゼントだから」

 真緒から離れる母親、

「また、未確認生物を探して会いに行くの?」

「怯えて寂しい思いをしている子たちだからね……誰かが保護してあげないと、それじゃね真緒」

 手を振りながら、母親は父親の魔王が降りて行ったのと別の、飛び石階段の浮かぶ石を降りていった。


 真緒の両親がいなくなると、少し離れた小惑星の上に座っていたワスレナ・ミソラが言った。

「両親との会話は終わったか?」

「うん、終わった」

「そうか、オレには生まれた時から親はいない……家族に、どう接していいのかわからない」

 宇宙邪神が、真緒に言った。


「最初からわかっていた……破壊と再生の力を持っている魔王真緒には、かなわないと。オレが壊した世界も結局は再生しちまうからな……自分で自分を再構築できる者に、破滅や滅亡の邪神が太刀打ちできるわけがねぇよな」


 晴れ晴れとした顔でミソラが言った。

「楽しかったぜ、魔王真緒……また、退屈したら滅ぼしに来るからな、待っていろよ」

「うん、待っている」

「そこは、普通は否定だろうが……本当に調子が狂う変なヤツだな、魔王真緒は」

 宇宙邪神が去ると、砕けた岩石や塵が集まって裏地球の再構築がはじまった。



 今日もいつもと変わらない朝が来た。

「真緒くん、おはよう」

「おはよう、満丸くん」

 空を飛んできたフルーツバット怪人の暗闇果実が着地する。皮肉っぽい挨拶をする果実。

「おはよう、残念なイケメン」


 通学路の角を曲がると銀鮫海斗。

「ようっ、マオマオ」

 花屋の店先で水やりをしながら、真緒に頭を下げるリグレット。

 空を飛んでいく、暁のビネガロン。

 腕を組んで歩いていく、ラッコ美とシアン。


 公園では焼いた生ハムをベンチに座って仲良く食べている、灼熱雷太と柿茸螺魅の姿があった。

 道をふさぐ、コンテナトレーラーの上から、極神狂介の声が聞こえてきた。

「待っていたぞ! 魔王の息子! 今日こそ倒す!」

 塀を飛び越えて現れた、フリフリコスチュームの白玉栗夢。

「マオマオくん、父の仇!」

 真緒の前に進み出る、銀鮫海斗と暗闇果実。

「まったく、毎日毎日懲りない連中」


 空ではマンガに出てくるような、笑顔の太陽が輝き。鉄搭に座ってアイスキャンデーをナメている蒼穹テラ美が。

「今度の太陽、変わっている顔がある」

 そう呟いた。


 マオマオくんの世界は、今日もやっぱり平和です……たぶん。


シン・最終章【魔王真緒は永遠に】〔了〕

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