縁談!? ハニートラップ!?
「笹宮君。お見合いをしてくれ」
「は?」
ザニー社に呼び出された俺は、正面に座っている専務の旺飼さんから衝撃的な申し出を受けていた。
「えぇ……っと、冗談……ですよね?」
「いや、真剣な話だ」
旺飼さんはスマホに女性の画像を表示して俺に差し出した。
オシャレに髪を編んでいる、知的さを兼ね備えた可愛い女性だ。
仕事内容は……受付となっている。
これだけ抜群のルックスだと、さぞかしモテるだろう。
しかし……、どこかで見たことがあるような気が……。
いや、気のせいか。
「もちろん本当に結婚してくれという話じゃない。今回は敵のスパイ活動を防止することが目的なんだ」
「敵? もしかして……」
「ああ。見合い相手はバベル社日本支部の女性社員だ」
バベル社って、四季岡ファミリアのAI技術を狙っている奴らか。
急に話がシリアスな展開に入ったため、俺は姿勢を正した。
旺飼さんは俺の気持ちを察したのか、軽く頷いてからゆっくりと話を進める。
「今度行われる次世代AI展で発表する兄のランキングシステムの開発には、ザニー社も関わっているからね。君を通じて情報を仕入れたいのだろう」
「そう言う事ですか。驚きましたよ……」
「ははは、すまない。結論から言った方がいいと思ったのだが、よけい混乱をさせてしまったかな」
そりゃあ、普通は混乱するだろ。
さてはわざと誤解するように言ったな?
旺飼さんってたまに茶目っ気をみせるからな。
「でもどうしてバベル社は俺と縁談の話なんか……」
「以前我が社に張星という男がいたのを覚えているだろ?」
「確かコミケの時に邪魔をして、この前警察に捕まった人ですよね」
「どうも張星はバベル社と繋がっていたらしく、こちらの情報を横流ししていたそうなんだ」
「あいつ……、そんなことを……」
「そして張星は笹宮君を要注意人物として報告していたみたいだね」
張星はエリート意識があるくせに仕事をせず、女にだらしないしない……。まさにチャラ男という感じの男だった。
思い出してきた。
あいつ、バレンタインの時に四季岡ファミリアのレポートを強奪しようとしたんだよな。
そういえば、他の企業に四季岡レポートを持っていくとか言ってたっけ。
しかし今回はこの美人が相手なのか。
やりにくいな……。
「先に言っておくが、敵は確実にハニートラップを仕掛けてくる。くれぐれも注意してくれ」
「ハニートラップですか。私も男ですからね。注意しないと……」
すると旺飼さんは鼻で笑うしぐさをした。
「まぁ、その点に関しては信用しているよ。なにせ、舞と一緒にお風呂に入っても何も手を出さなかったそうだからね」
「えっ!? な、なんでそのことを!?」
俺はつい先日、楓坂と一緒に風呂に入るという体験をしてしまった。
普通ならなにかしらのアクションを起こすのだろう。
だが、俺と楓坂の間にそういうやり取りは発生しなかった。
しかし楓坂がそんなことを他人に話すか?
いや、楓坂ってウソをつくのが苦手だから、隠そうとして逆にバレてしまったのか。
「ところで笹宮君……」
「はい……」
「君の隣にいる音水君が白目をむいて気絶しているが、大丈夫かい?」
「えっ!? あっ! お、音水!?」
言われてすぐに横を見ると、同席していた音水が上を向いたまま気を失っていた。
……。
それからザニー社を後にした俺と音水は、会社に戻る車の中で話をしていた。
「音水、大丈夫か?」
「はい。あまりにも衝撃的な話だったので……」
見合いの話はたしかに衝撃的だったが、まさか気絶するとは……。
そんなことありえるか?
うーん。音水ならありえるか。
「旺飼さんの話は覚えているのか?」
「はい。私と笹宮さんの縁談の話ですよね。そこだけは覚えているんですけど……」
「最初から全然覚えてないんだな」
微妙に記憶が改変している……。
だが、最初のほうで気絶したということは、俺と楓坂が一緒に風呂に入ったという部分は聞いていないということだ。
それはそれで良しとしよう。
「でもバベル社のスパイ活動を防止することが目的ならしかたがないですよね」
「まぁ、俺のコミュ力の低さは定評があるからな。相手がどんな攻撃をしても跳ね返してやるさ」
「コミュ力の低さを防御力みたいに言う人、笹宮さんが初めてですよ」
■――あとがき――■
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
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次回、お見合いに向けて笹宮が取った行動は?
投稿は朝7時15分。
よろしくお願いします。(*’ワ’*)
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