1月23日(土曜日)旅館に到着
車で移動した俺達は海側にある旅館にやってきた。
ネットの写真を見た時は古い旅館と思っていたが、施設そのものは比較的新しい様に見える。
俺達が宿泊する部屋は和室なのだが……、
「あれ?」
おかしい。たしか二部屋予約したはずなのだが、一部屋しか取れていなかった。
隣を見ると楓坂が、じぃ~っとこちらを見てくる。
ヤバい……。これだと俺が仕組んだみたいじゃないか。
「笹宮さんもうこういうことをするんですね」
「待て待て。本当にわざとじゃないんだ」
「ふぅ~ん」
そう言いつつも、楓坂は荷物を部屋の隅においてくつろぎ始めた。
こういう時、マイペースでいてくれると助かる。
「でもいいじゃないですか。せっかく旅行に来たのに部屋で一人だとさびしいですし」
「そ……、そうだよな」
よかった。どうやら怒ってはいないようだ。
俺も荷物を置いて、座椅子に座ることにした。
「でも同じ部屋になっても、あんまり抵抗ないよな」
「普段から一緒にいる事が多いですものね」
よくよく考えると、俺と楓坂ってしょっちゅう一緒の部屋にいるんだよな。
いわゆる、気兼ねなく接することができる関係というやつだ。
まぁ、初めて会った時からお互いに遠慮なしだったんだけど。
すると楓坂がモジモジとし始めた。
「でも……ちょっと落ちつかないんですよね……。どうしてかしら?」
「こたつがないからだろ?」
「あ、それですね」
日本という文化が生み出したアルティメットインテリア、それがコタツだ。
中に入るとぬくぬくで、全ての人間を魅了してしまうパワァーがある!
しかし、いざなくなるとその寂しさから、落ち着かなくなるという弱点も孕んでいるのだ!!
すると楓坂は俺の隣にやってきて、体をくっつけてきた。
「……なんだよ。急にくっついてきて」
「コタツの代わりになるものって、笹宮さん以外が思いつかなかったんです」
「俺をどんなに調理してもコタツにならないと思うんだけど」
ぐいぐいとこっちに体重をかけてくる楓坂。
なんだよ。そっちがやるならこっちも攻撃するぞ。
俺も負けないように、ぐいぐいと楓坂に体重をかける。
さらに楓坂はこっちに体を倒してきた。
「むっ。この、このぉ~」
「おい、力入れすぎだろ」
「笹宮さんも抵抗してるじゃないですか」
「しないと倒れるだろ」
このやりとりがコタツの代わりになるとは思わないが、暖かくなってくる。というか、少し楽しい。
でもなんかこれって、イチャイチャしているだけのようにも……と、考えた時だった。
「いらっしゃいませ、お客様」
「「ひぃ!!」」
挨拶にやってきた女将に驚いた俺達は瞬時に離れる。
めっちゃ焦ってしまった……。
女将はと言うと、慌てている俺達を見て不思議そうな表情をしている。
「……どうかされましたか?」
「い、いえ……。なにも……。はは……」
「本日はこの旅館に泊まって頂き、誠にありがとうございます。七時頃にはお食事を用意できますので、それまで温泉などをお楽しみください」
女将は挨拶をすると、そのまま部屋を出て行った。
さて、ここからどうするか。
「温泉か……。車の運転で疲れたし、行ってみるか」
「そうですね。これで混浴でしたら最高ですけど」
「とかいって、本当に混浴だったらどうするんだよ」
「笹宮さんが慌てふためくだけですね」
「よく言うぜ」
口は達者だが、楓坂の恥ずかしがり屋な性格はとっくの昔にお見通しだ。
もし混浴なんて状況に陥ったら、きっと慌てふためくに違いない。
とはいえ俺も混浴に入りたいと思ったことはあまりない。というより、そんなものが本当にあるのか疑っている。
正直なところ混浴なんてアニメだけの代物じゃないかと思っているくらいだ。
でも、もしそういう機会があるのなら……入ってみたい。
浴衣に着替えた俺達はさっそく温泉へと向かった。
カタログを見て知ったのだが、どうやら露天風呂らしい。これは楽しみだ。
エレベーターに乗って移動し、俺達は温泉の入口にやってきた。
そしてのれんを見て、俺は言う。
「混浴じゃないな」
「残念そうにしないでください……」
「してねぇよ。っていうか、楓坂は安心してるだろ」
「べ……別に普通です」
なんか俺達って、本当にわかりやすいよな。
■――あとがき――■
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次回、結衣花と電話? なにを話すの?
投稿は朝7時15分。
よろしくお願いします。(*’ワ’*)
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