11月14日(土曜日)本屋でお出かけプランを考えよう


 土曜日。

 コンペに提出する企画を考えていた俺は、ショッピングモールの中にある本屋に来ていた。


 ここは比較的大きな本屋さんで、本の種類も豊富だ。

 アイデアに詰まった時は、公園か本屋に行くというのが俺の仕事術でもある。


「さて、なにかいい本が入ってないかな」


 まず見るのは入口付近に平積みされている本だ。

 この本屋は手書きポップで本の見どころを紹介しているので、読む楽しみを引き上げてくれる。


 とりあえず話題の一冊を確保し、次は専門書がある場所へ向かう。


 本屋の奥の方に行くと高い棚が並んでいて、そこには数えきれないほどの専門書があった。

 学生の頃はこの本すべてを読んでみたいと思ったものだ。


 さぁて、とりあえずイベントに使えそうな資料を探してみよう。


 たしかこの列に……っと、……あれ?


 デザイン関連の本が並んでいる場所に辿り着いた時、本棚の前で必死に背伸びをしている十六歳くらいの女子がいた。


「ん~。ん~……」


 ミディアムショートの髪に、身長の割に胸が大きい女子高生。

 間違えるはずがない。


 あれは結衣花だ。


 今日は可愛らしさが強調されるガーリーコーデ。

 淡い色を基調としていることもあり、女子高生らしい魅力が引き立っている。


 彼女は必死に上にある本を取ろうとしているが、背が足りないようだ。


 ……その時、


「あっ」


 本棚にピンで止めていた手書きポップが、結衣花の胸に引っ掛かって落ちてしまう。


 近くにいた俺は、ポップが床に落ちる前に拾い上げた。


「あ、ありがとうございま……って、お兄さん?」


 目を丸くして驚く結衣花。

 さすがのフラットテンション女子も、突然知り合いが現れて驚いているようだ。


「ふっ……。いつも無双の結衣花にも弱点があったな」

「もぉ~。なんでこんな時に会っちゃうかなぁ」


 本棚に手書きポップを止め直した俺に、結衣花は訊ねてくる。


「お兄さんも本屋さんにくるんだね」

「ああ。買うだけならネットでも注文できるが、本屋の方が選ぶ楽しさがあるからな」

「それわかる。本屋さんに行くといろんなことを知りたいって気持ちになるよね」


 そんな話をしながら、俺は結衣花が背伸びをしていた先にある本を手に取った。


「ほら、これが欲しかったんだろ?」

「うん。このデザイン集、ネットだと売り切れてて……」

「見つかってよかったな」


 大事そうに本を持った彼女は俺が持っている本を見る。


「お兄さんはどんな本を探しているの?」

「特に決めているわけじゃないんだが、新しいアイデアの参考になるものがあればと思ってな」

「この前言っていたコンペのため?」

「まあな」


 とはいえ、今はアイデアの欠片も思いつかないから、本を選ぶことすら迷っているんだよな。


 ポンポンとアイデアが湧いて来る人がうらやましいぜ。


 しばらく二人で本を選んだあと、結衣花が急に話を振ってきた。


「ねぇ、お兄さん。今日は車でしょ?」

「それがどうした?」

「ふふふ。私がなにを考えているか当ててみて」

「唐突にクイズタイムかよ」


 さぁて、結衣花様がわたくしめをお試しになっているようだ。

 ここはバシっと決めてやろうじゃないか。


「そうだな……。家まで送って欲しい……とか?」

「ぶー。ハズレ」


「わかった。車の写真を撮りたいんだな」

「資料としては欲しいけど、今考えていることとは違うね」


「となると……秘密結社から追われているので、カーチェイスをして欲しいということか」

「当てる気ないでしょ」


 最後のはやぶれかぶれだったが、やはり外れていた。

 むしろ当たっていたら、俺が驚いていただろう。


「すまん。マジでわからん……」

「しょうがないなぁ。答えは、帰るついでにドライブしたいなって思ってたの」

「……いや、そんなのわかんねえよ」

「わかる人ならすぐにわかるはずだよ。お兄さんもまだまだだね」


 なぜか勝ち誇ったように胸を張る結衣花。

 しょうがない。ここは勝者の女子高生の願いを聞いてやろう。


「まぁ、今日は特に用事もないから構わないぜ。それでどこへ行く?」

「全然決めてない」

「おい……」


 とりあえず近場のドライブスポットをまとめた雑誌が売っていたので、早速購入してみた。


 本屋を出た俺達は近くに設置されているイスに座って、雑誌を広げる。


「じゃあ、とりあえず……海? ん~、ありきたりか……」


 その時だった。

 結衣花は普段出さないような声で、開いたページを指さした。


「あ! ああ!」

「え……、なに?」

「これ! これ食べたい!」


 それは少し変わった盛り方をしたソフトクリームだ。

 いわゆるインスタ映えを狙ったものだろう。


 確かに見栄えは特徴的だが……


「ソフトクリームって、もう十一月だぞ?」

「いいの。これがいいって! 行こ!」


 しかし結衣花がこんな風にはしゃぐなんて、初めて見たかも。


 よし! いろいろな意味で面白そうだ。

 雑誌に載っているソフトクリームを食べに行こう!



■――あとがき――■

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

☆評価・♡応援、とても励みになっています。


次回、結衣花と一緒にいちゃいちゃソフトクリームタイム!?


投稿は、朝・夜の7時15分ごろ。

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る