8月14日(金曜日)妹、参上! にひっ!


 お盆休み二日目。


 楓坂から告白をされた影響で、あまり寝ることができなかった。


 つーか、楓坂の夢を見た。

 これ、重症だわ……。


 ……と、ぼーっとしているわけにいかない。

 今日から妹の愛菜あいなが泊まりに来るんだった。


 ぴんぽーん♪ 


 掃除を終えた頃、インターホンが鳴った。

 玄関のドアを開くと、サイドポニーテールの女子中学生がドヤ顔で立っている。


 腰に手を当て自信満々の態度だがやはり中一。……背は低い。


「兄貴、ひっさしぶりーっ!」

「相変わらず元気だな。……って、こら。くっつくな」

「やだぁ~。きゃははっ」


 この元気ハツラツな女子中学生が笹宮愛菜あいな……、俺の妹だ。


 親父が五年前に再婚した人の連れ子なので血は繋がっていないが、とても懐いてくれている。


「お盆中は家族旅行だったんだろ。どうして一緒に行かなかったんだ?」

「たまにはお父さんとお母さんを二人っきりにしてあげたいじゃん。にひっ」


 なるほどね。

 愛菜なりに気を利かせたというわけか。

 だったら、兄として協力してやらないとな。


 すると愛菜はパンッと両手を合わせてお願いのポーズをする。


「それでね、兄貴にお願いがあるんだけど……」

「なんだ?」

「友達を連れてきたんだけど、家に上げてもいいかな?」

「ああ、構わんぞ」


 連れてきたということは、どっちにしても入れるつもりだったんだろう。

 別に愛菜の友達なら気をつかう必要もないし、好きにさせてやればいい。


 すると、愛菜の後ろに十七歳くらいの美少女が現れた。


「えっとね。最近入ったサークルでお世話になっている結衣花さん。めっちゃ仲がいいの」


 丁寧に紹介してもらってなんだが、俺は彼女をよく知っている。

 なにしろ、毎朝電車で会う女子高生だからな……。


「おはよ。お兄さん」

「……よ、……よぉ。結衣花」


 さすがと言うべきか。

 この状況でも結衣花はまったく驚いている様子がない。


 俺はというと、表情には出していないがメチャクチャ驚いている。


 そして妹の愛菜は首を傾けて、不思議そうな顔をした。


「あれ? 二人とも知り合い?」

「ああ、少し話をするていどなんだけどな」

「そうなんだ! じゃあ、ちょうどいいね! 結衣花さん、遠慮しなくていいから上がって!」


   ◆


 俺の住んでいる部屋は1LDKで、都内としては家賃が安い方だ。

 マンションが古いということさえ気にしなければ、かなりいい物件だろう。


 愛菜に頼まれていたお菓子と飲み物をリビングに運ぶと、二人は座布団に座って雑談を楽しんでいた。

 もっともしゃべっているのはほとんど愛菜だが……。


「しかし、結衣花と愛菜が知り合いだったとはな」


 結衣花が頷いて答える。


「うん。この前、オタク友達のことを言ったでしょ。いちおうサークル活動をしているんだけど、そのリーダーの妹さんの友達が愛菜ちゃんなの」


 結衣花が言うにはアニメや漫画の好きな女子で集まったサークルらしく、たまに集まって遊んでいるそうだ。

 

 それにしても中学生の子がいるとは聞いていたが、まさか愛菜のことだったとは……。


「ねえ、兄貴」

「ん?」

「着替えるから隣の部屋を借りていい? 結衣花さんに新しいコスプレを着てもらうんだ」

「別に構わないが……、って! え!? コスプレ!?」


 驚いて結衣花を見ると、彼女は少し照れたように視線をそらした。


「結衣花がコスプレをするのか?」

「愛菜ちゃんがどうしても見たいって言うから……」


「結衣花がコスプレをするのか?」

「そう言ってるじゃない」


「結衣花がコスプレをするのか?」

「何度も聞かないでよ。恥ずかしいでしょ」


 照れていることを隠すように、結衣花はコスプレ衣装を持って俺の部屋に入っていった。


 いやぁ……、あの結衣花がコスプレとはね……。

 どんなふうに変身するか楽しみだ。


 結衣花がいなくなったリビングで、俺は菓子をつまんだ。


 すると我が妹の愛菜がニヤニヤしながら、ちょこんと隣に座る。


「ねぇねぇ兄貴。結衣花さんのこと、どう思う?」

「どうって……普通の女子高生と思うが?」

「かわいいと思わない?」

「まあな」

「きっとさ、結婚しても家庭的で優しい人だと思うんだよねぇ~ん」

「……なにが言いたいんだ」


 さっきから妙なことを訊ねてくる愛菜に、俺は訝し気な表情を向けた。


 中一らしからぬドヤ顔をした妹は、アニメキャラの決めポーズを真似て右目を隠す。

 指の角度が絶妙だ。


「ふふん。実は結衣花さんを始めて見た時、きゅぴーんと来たんだよ。……この人、私のお姉ちゃんになるって」

「……意味がわからないんだが?」

「だーかーら。兄貴のお嫁さんになるってこと。私が恋のプロデュースをしてあげるね! ぶいっ!」


 かわいらしくダブルピースをする妹を見て思った。


 どうやらまた、不安のタネが増えそうだと……。



■――あとがき――■

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

☆評価・♡応援、とても励みになっています。


次回、結衣花のコスプレでラブコメ発生!?


投稿は、朝・夜の7時15分ごろ。

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

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