クラスメイト

 寮に入居して数時間後。

 アルベロたちと新入生たちは寮の管理人に呼び出され、食堂のような場所に集まった。

 そこで、男女別に分かれ、制服の採寸をすることになった。

 薄いカーテン一枚で隔てられた場所。しかも食堂で採寸など聞いたことがない。

 文句を言う生徒もいたが聞き入られない。

 アルベロは、文句を言うことなく同級生を見た。


「…………」

「おい、どうしたアルベロ」

「いや、F級って三十人くらいしかいないんだなーって」


 男子十五、女子十五の半々だ。

 女子は薄いカーテン一枚で隔てられた場所で服を脱ぐのに抵抗があるようだ。それも当然だろう。

 しかし、採寸する担当者がイライラし始めていたので諦めたようだ。

 男子は壁際で服を脱ぎ、シャツとズボンだけの姿になる。

 それから一列に並び、採寸を受けた。


「こんな扱いないよな」


 採寸を終えたハウルが苦笑し、カーテンを見た。

 女子はまだ採寸を行っている。さすがに、計る担当者は女性だった。


「まさか、こんなボロ食堂で男女一緒に採寸とは。一応、オレら貴族だぜ? 親にチクったら……はは、なんもねぇだろうな」

「だから、こういう扱いなんだろ」


 着替えを済ませたアルベロは、ハウルと一緒に壁に寄り掛かる。

 帰ろうとしたが、管理人が「まだ話がある」と帰らせてくれないのだ。

 すると、着替えを終えたラッツも来た。


「へへ、女子の生着替えだぜ?……なぁ、見たくねぇ?」

「「…………」」

「な、なんだよその目は」

「いや、退学になるぞ」

「いや、アホだろお前」


 すかさず、ハウルとアルベロが突っ込む。

 そして、ノタノタと着替えをしていたマーロンが合流。ちょうど採寸が終わり、カーテンが取り払われた。

 当然、女子の着替えは終わっていた……ラッツが「ちっ」と舌打ちをしたのをアルベロは聞いたが無視。

 採寸係は退室し、この寮の責任者である老婆がキンキン声で言う。


「手短に言うよ。ここはF級新入生の寮。ここの掃除当番、食事係を決めな」

「「「「「え……?」」」」」

「いいかい。F級は自分のことは自分でやるルールだ。じゃあ、あとは勝手に決めな」


 そう言って、管理人の老婆は名乗りもせずに部屋を出た。

 そして、取り残されたF級の三十人。男子も女子も喋らず、互いの顔をチラチラ見る。

 沈黙を破ったのは、ラッツだった。


「よーし!! さっさと掃除当番とメシ係決めようぜ!! あ、オレはラッツ。よろしくな!!」


 ラッツをきっかけに、少しずつ周りが話し出す。

 アルベロは、ラッツの傍へ。


「やるな、お前」

「へへ。こういうの憧れてたんだよね~! クラスのリーダー! へへ、オレってそんな風に見えるか?」

「んー、どっちかと言えばお調子者かな?」

「はぁぁぁぁ!? てめ、アルベロこのっ!!」

「いでででで!? 冗談だっつーの!!」


 ラッツにヘッドロックをかけられたアルベロは呻く。

 それを見た女子がクスクス笑い、ラッツは上機嫌になりその女子の元へ。

 さらに、いつの間にかハウルも女子と仲良くなり、マーロンも他の男子や女子に混ざって話をしていた。

 取り残されたアルベロ。


「……ん」

「あ……」


 そこで、一人の女子と目が合った。

 薄い桃色の長い髪をした少女だ。アルベロを見てサッと目を反らす。

 アルベロも、アーシェ以外の女子と喋ったことがないので、やや照れくさい。

 女子も、積極的な方ではないのだろう。周りの女子と馴染めないように見えた。


「おーいアルベロ、お前料理できるか?」

「なんだよラッツ……料理なんてやったことないぞ。掃除ならできるけど」

「じゃ、お前掃除係な。お、そっちのキミは? 名前名前」

「え、あ、ら、ラビィです……わ、わたしも……お掃除で」

「あいよ!……お、ちょうど半々に分かれたな。とりあえず、掃除係とメシ係決まったぜ!! じゃあ発表しまーす!!」


 ラッツが仕切ったおかげで、係は早く決まった。

 ラッツが名前を読み上げている間、アルベロはラビィを見る。


「…………ぁ」

「う、お、おお」


 そして、ばっちりラビィと目が合い、慌てて反らした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る