【文香救済編】暴力系幼馴染と異世界に転生したら、幼馴染が魔王軍に裏切るとか言ったから、そのクソみたいな面を思いっきりぶん殴って、別のヒロインと付き合ってみた。

静内(しずない)@~~異世界帰りのダンジ

第1話 再び、あの時へ


 俺たちは、新たな旅に出ようとしていた。


 そして旅立とうとしたとき、1つの疑問が思い浮かぶ。


「文香のとのやり取り、本当に良かったのか?」


 確かに文香は俺の人生をことごとく壊してきた決して許せないやつだ。

 おまけに自身の利益のために魔王軍と手を組むという言語道断なことをして、最後は死んでいった。


 それでも、今になって思う。これで終わりでいいのかと。

 心のころに、ならないのかと。



 そしてその疑問をぶつける相手は、いた。

 ルナの家で、ちょうど一人になったメルアに話しかけた。


「メルア、ちょっといいか?」


 メルアはバッグに服を入れているのを止めてこっちを向いた。


「信一君。何?」


 俺はいいずらそうに文香のことについて話し始める。いくらメルアといっても先日命を懸けて激戦をした敵だ。

 だからこんなこと言ってもわかってくれる保証なんかない。


 それでも、勇気を出していってみた。


「あのさぁ、文香のことなんだけれど……」


 俺は彼女のことについて話し始める。文香、あそこで死んでしまったけれど、本当にこれでよかったのか。

 救いの道はなかったのか。


 もちろん、「嫌い」といわれればそれまでだ。どんな理由だろうと文香は自分の意志で魔王軍に裏切って俺たちに牙を向けてきた。


 メルア達が嫌だと言われればそれまでで、この話は俺の独り言で終わる。


 メルアは、しばしの間考えこむ。そして女神のような、優しい微笑を浮かべ言葉を返し始めた。



「私は、出来ることならもう一度会いたいと思ってる──。確かに、自分勝手な子だったけれど、不器用なところもあったんじゃないかと思う」


 流石はメルアだ。

 あんなことをされても、優しさを忘れない。文香に対して、優しさを持っている。

 予想通りだ。




 俺は、そっと提案をする。


「だからさ、シェルムさんのところに行かない? あの人なら、何かできるかもしれないと思うんだけれどいいかな?」


「──そうだね。ダメかもしれないけれど、後悔するならできることをすべてやった後でも大丈夫だよね」


 ──素敵だ。いつも前を向いているメルアならでばの言葉だ。


 文香に救いの道を今から与えるとすれば、時をさかのぼらなければならない。

 それができるのは、一握りの冒険者だけだと俺は思う。


 それができる力があるとすれば、あの人しかいない。

 ギルドの中でも相当な魔力と力を持ってあるであろう、あの人だ。



 そして外出の準備を終え、俺たちは外へ。



 早歩きでほどなくしてギルドの本部にたどり着いた。


 そして受付のお姉さんの前に立つ。


「あ、信一様とメルア様ですね。どういたしましたか?」


「ちょっとシェルムさんに用があるのですが、今この場所にいますか?」


 すると、お姉さんはいったん頭を下げて奥の部屋へ確認へ行く。それから一言話してから俺たちのところへ戻ってきた。


「大丈夫だそうです。今ならコンタクトをとれますよ」


「そうですか、ありがとうございます」


 そして俺たちは奥の部屋へと足を運んだ。



「私はここにいますよ。なんでしょうか、信一さん、メルアさん」


 シェルムさんは優雅にティーカップに入っている紅茶うぃすすると、優雅な態度で俺たちに向かって話しかけてくる。



 そして俺は無茶苦茶かもしれない願いをシェルムさんにお願いする。


 文香のこと、もう一度話すことができないだろうかと。



 そしてそのことを離すとシェルムさんは腕を組んで窓の外に視線を移す。


 時間にして数分だろうか無言で、窓の外を見続けていた彼女が俺たちに話しかけてきた。


「なるほど。彼女のことか。確か幼なじみだったんだってね」


「はい。やはり、ダメでしょうか」


 無茶なお願いをしているというのはこっちもわかってる。時をさかのぼるなんて、やはりシェルムさんでも、出来ないのか……。


「いや。そのやり方がないわけではない。しかし、代償というものがある。私の話をよく聞いてほしい」



 そして、俺はその話を聞いた。


 「つまり、一度戻ったら二度と時を巻き戻せないという事ですね」


 「はい」


 シェルムさんの策。それは、時を巻き戻すということだ。

 確かにそれならいけそうだが、欠点もある。一度しか戻れないということだ。



 けれど、答えなんて決まっている。後悔するのは、それをしてからでも遅くはないはずだ。

 俺は、メルアと1回だけ目を合わせる。


「信一君。私が今、何を考えているかわかるよね」


 当然だ。メルアの考えていること。ずっと隣にいた俺だからわかる。


「ああ、わかるさ。もう一回、あの戦いをやり直す。そして叫ぶ」


「正解。やっぱり信一君、わかってるじゃん」






 それから俺たちは、サインをする。どんなことがあっても責任は自分で請け負うと。



 そして俺とメルア、シェルムさんが大聖堂の奥へ。


 そしてそこには地下へと続く階段があった。


 薄暗いらせん状の階段をずっと下った後、ランプに照らされた薄暗い直線を進んだ先に分厚い鉄でできたドア。


 神秘的な模様をしていて、この先に何かがあるということがよくわかる。


 そして扉の前に立ち、シェルムさんが扉に向かって手をかざすと──。


 ゴゴゴ──、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。



 その手に魔力がともり、淡い赤色に光りだす。

 すると扉が開き、奥にある部屋が視界に入る。


「さあ、入ってくれたまえ」



 俺たちはシェルムさんを先頭に部屋の中へ。


 神秘的な幾何学模様に、女神を表わしたような絵。下には星の形をした魔法陣。

 どんな部屋かはわからない。それでも、特別な部屋だということは理解していた。

 そしてシェルムさんが部屋の一番奥へと移動し、俺たちに話しかける。魔力を伴ったつえを持ち、真剣な表情をしているのがわかる。


「ここは女神様の力が宿る神聖な場所です。ここでしか使えない、私専用の術式で、あなたたちを文香さんとの最後の戦いの直前まで送ります」


「了解です」


 そして最後に俺たちに話しかけてきた。警戒するような、覚悟を決めたような表情をしながら。


「最後に通告しておきます。この術式を使うと二度とこの今に戻ることはできません。たとえ今が正解だったと感じても、どうすることはできない。それでもいいでしょうか?」


 ああ、確かそうだったな。忠告してくれるなんて、やっぱりこの人はいい人だ。

 俺が答えようとする前に、メルアが元気いっぱいな言葉で回答した。


「ありがとうシェルムさん。でも、大丈夫だよ。それでも、私達確かめたいの。本当に文香ちゃんの末路が、あれしかなかったのか──」


 メルアの、本気のまなざし。それに俺も真剣な表情でシェルムさんをじっと見つめた。

 シェルムさんは俺たちの真剣な気持ちを理解してくれたようで、ほっと溜息をついた後、微笑の表情を浮かべた。


「──愚問だったな。あなたたちに、そこまで強い意志があるというのはわかりました。それではこれから術式をかけます。下に魔法陣があるでしょう。その中心に立ってください」


 シェルムさんの言葉通り、俺とメルアが下にある星形の魔法陣の中央に立つ。

 彼女は魔法の杖をこっちに向かる。そしてそれを握る手に力が入ったかと思うと、その杖が金色に強く光始めた。


「じゃあ、早速だが、行くぞ。二人とも、幸運を祈る」


 そう言うと、金色の光が一層強く光始めた。それと比例するように魔法陣が強く光始める。


 シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。


 そして大きな音を上げると、俺の目の前が真っ白に光った。


 文香、ふざけたやつだったけど、本当にあそこですべて終わって良かったのか?

 その答えを、今探しに行こう。



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