酸素をください
人間
酸素をください
昔から理解ができなかった。
葬式で故人を想い涙する人。
卒業式で別れを惜しみ泣く人。
どうして結末が分かっている物語に涙を流すのか、僕には理解ができなかった。
最初から分かってることじゃないか。
だが、そんな人たちを見て少し羨ましくもなった。
酸素が薄くなっていくような感覚に襲われる。
お前は薄情な人間だ。
人の心がない。
可哀想な人。
そう言われているようだった。
また酸素が薄くなっていくのを感じる。
生まれ変わってもまた自分になりたいです。
そう笑顔で答える人たち。
訳が分からなかった。
自分がおかしいのだろうか。
ああ、また酸素が薄くなっていく。
生きる義務なんてないだろう。
どうしてそんなに普通な顔して生きていられるの。
辛いこともあるけど、幸せなこともあるでしょう?
そうだね。
その通りだ。
だから苦しいんじゃないか。
幸せの後に襲ってくる不幸が、化け物のように見える。
僕を嘲笑っているようだ。
酸素が薄く、なっていく。
「ねぇどうしてそんなに死にたいの」
なんでそんなこと言うんだ。
どうしてそんな顔をするんだ。
君は、
せめて君くらいは、僕を救ってくれないか。
涙を流す君を横目に、だんだん視界が暗くなっていく。
「私と一緒に生きてよ」
ああ、そういうことか。
単純なことだったんだ。
人の心がやっと分かった気がする。
でも、もう遅いんだ。
これで充分だ。
酸素がまた、
薄く、
なっていく。
酸素をください 人間 @ningensan
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