第7話 チュートリアル『回復』

「あららぁ~、負けてしまいました~」


 閉じていた目を開いて、周囲の様子を確認して見るとそこはアジトの前だった。


「あれ…?」


「…、…」


「あ、スノー」


 卵のまま微動だにしないのは、紛れもなく俺のパートナーであるスノーに間違いない。


 なんだか様子が可笑しいように見える。


「パートナーのスノーちゃんは、戦闘不能状態に陥ってしまったようです。アイテムを使って、回復してあげましょう」


 そう言うとゼぺルは、瓶の形をしたアイテムを差し出した。



ゲンキイッパツ

 HP最低値で戦闘不能から復帰する。



「あれ、これってCMで有名な…」


「広告の勝利ですね…って早くスノーちゃんに使ってあげましょう!」


「ああ、そうだった」


 瓶をスノーの元に持っていくと、使い方が分からない事に気付き足が止まる。


「ゼペルさん、コレどうやって使うの?」


 右手の瓶を掲げる。


「ああ、はい。スノーちゃん傍によって…」


 瓶を掲げながら歩き出し、スノーの隣で止まる。


「瓶のふたを開けてー」


 瓶のふたはペットボトルのキャップと同じ、開けた時にバキッとなるフィンロック式。


「かけます」


「かけ…ええぇ!」


 ゼペルさんの声に操られる様に、当たり前のようにスノーの頭上に降り注ぐ謎の液体。


「…!」


 水色に輝くエフェクトが発生すると、疲れた様に見えるスノーがトボトボ歩き出した。


「あらら、スノーちゃんはダメージが残っている様ですね。ちょっとステータスを確認して見ましょう!」



名前 スノー ♀

レベル1

ランク1

系統 【幻想】

種族 ドラゴンエッグ

属性 水


HP   50

MP   50

筋力   5

防御   10

器用   1

知力   5

精神   5

素早さ  1

運    10


忠誠度  12


スキル

 アクティブ

  【体当たりLv1】【魔力吸収Lv1】

 パッシブ

  【水の魔力Lv1】


称号 【第一の従魔】



好物  魔力 (水)

嫌いなもの なし


「ボスモンスターからスノーちゃんを庇った事で、忠誠心がやや上がったようですね。そしてHPを確認してみてください。回復しているのが分かるかと思います」


「あのアイテムの効果だと、HPは1になりそうなものだけどな」


「実は実は、アジトに戻るとHPやMPは全回復しちゃうのです~。でもモンスターの疲労とは別問題でして、自然に回復するのを待つかアイテムなどで癒してあげてください」


 「はい」と差し出されたのは、今時珍しいねじれた袋に包まれた飴玉。


「おやつを食べて癒される。OLあるあるですよねぇ」



飴玉

 疲労を少し回復させる。



「いや、知らんけど」


 取り合えず飴玉をスノーに差し出してみるが、体を小刻みに揺らしていて取ろうとはしない。


「あー、ダメですよ。スノーちゃんにはおててがないんですからぁ」


「あ、なるほど」


 飴玉を袋から取り出して、ピタリと手が止まる。


「スノー…口ないよな」


「あっ…」


 すると手に持っていた飴玉が、小さな光の粒になって指先から消失した。


「言い忘れていましたが、アイテムは使用の意思を示すだけで使用できますよ」


「え、じゃあ瓶の中身をかける必要」


「全くないですね」


 ガイドNPCに担がれるという珍しい体験。いや、したくは無かったけどね。


「やはり、皆さんにはモンスターとの触れ合いを楽しんでほしいですからね」


 まぁ、全くの考えなし何てことは内容で、少し安心した。

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