phase2

1-1 インテリア決めるときって、悩むよな

 伊野田たちはテグストル市街地の一画にある事務局の施設を拠点にしている。この施設には局員が駐在しており、派遣先でのオートマタ監視などが主な業務になっているほか、琴平のようにメトロシティから派遣されてくる局員の宿泊施設も兼ねている。


 現地の中古物件を改装したものなので、見た目は古めかしくも趣があり、クリーム色をベースにした温かみのあるデザインが特徴だ。門扉を囲むように後から設置された庭は、景観のためとは建前で目隠しの役割を兼ねている。


 しかし一歩中に踏み込めば、その外観と内装を馴染ませる気は皆無だったのだなと誰もが気づき落胆する羽目になるだろう。まるでメトロシティに転移したのではないかと思う程、内装にテグストルらしさは微塵もない。


 内装はメトロシティの事務局を思わせる青みがかった照明を基調にデザインされており、薄暗く無機質だ。会議室にはシャンデリアがぶら下がっているが、華やかさを出来るだけ除外した構造で、青白く灯る裸電球には色気も何もない。よく言えば仕事場らしく落ち着いて緊張感があり、悪く言えば薄気味悪い。


 到着して直ぐの時は部屋の内装など気にしていなかったが、改めて眺めると会議室以外の客室も似たようなレイアウトで、この内装を発案した奴と承認した奴の顔が見てみたいと伊野田は思った。


 会議室には円卓を囲むように5脚の椅子が用意してあり、彼はキャスター付きの椅子に腰かけたまま窓際まで1mほど移動した。コーヒーとウォーターサーバーも設置されており、自由に使えるのはありがたいが、口にしているコーヒーすら味気なく感じる。


 そしてこれから男三人で缶詰になって話し合いをするのだから面白くもなんともない。左手で持ったカップを傾けないように注意して、夕日を部屋から眺めつつ、そんなことを考える。とろけるようなオレンジ色の揺らぎを浴び、感傷のようなものを覚えてカメラのシャッターを切るように瞬きした。


 夕日が市街地の陰に隠れ見えなくなると、体を円卓の方へ向け、端末を操作して円卓上にグラフィックを展開させる。浮かび上がったカードサイズのグラフィックに両手を掲げて、親指と人差し指で引き延ばす様に操作すると、空間に浮かぶグラフィックが拡大表記された。


 二人のよく似た女性のバストアップが映されている。二十歳ほどに見えるが学生と言われれば納得してしまいそうな曖昧さがあった。黒髪のロングヘアに黒い瞳、はっきりとしたっ顔立ちに二重の丸っこい瞳。

 もう一人はそれが茶髪のショートヘアになったくらいの違いしかないが、双子だということなのでそれはあまり気にならなかった。


 伊野田はその女性たちを、まじまじと眺める。「きみたちは本当に、ここにいるのかな」とぼやいていると、拓と琴平が入室してきた。各々コーヒーを淹れたり資料を展開させたり自由に動いたあと、眉根を潜めた伊野田が苦言を漏らす。

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