毎日一緒にいる幼馴染みと名字が同じだからって結婚していたことにされていた件
しゆの
前編
「眠いな」
ゴールデンウィークの最終日、俺は自室のベッドで欠伸をした。
休みだからって深夜までアニメを観ていた影響なのかもしれない。
明日から学校が始まるため、昼寝をしてしまうと明日は起きれなくなってしまうだろう。
そのために寝るわけにいかず、「ふわあ~……」と欠伸をしつつも寝るのを我慢している。
本当は今すぐにでも夢の中に入っていきたいが、もう一つの理由で寝ることが出来ない。
「もう……休みだからって夜更かしするからですよ。本当に
寝れないのは一緒の部屋にいる長袖のシャツにショートパンツを着た幼馴染みの少女──
これは俺が頼んだことで、寝そうになったら声をかけてくれと深雪に言ったのだ。
「生活が不規則にならないようにしないといけないからしょうがないですね」と、簡単に了承してくれた。
こういう時に幼馴染みという肩書きは便利だ。
些細なことをお願いすることが出来るのだから。
深雪とは兄妹のように育ったため、今もこうして一緒の部屋で話したりすることが多い。
名字が同じ白川というのとお兄ちゃんって呼ばせていたから、昔は本当の兄妹と間違われていた。
今ではしっかりとしている深雪の方がお姉ちゃんって感じになっていて、中学に入った辺りから俊くんと呼ぶように。
「そういえば今年から中学を卒業したら結婚出来るようにと法改正されたじゃないですか」
「そうなのか?」
「はい。ニュースにもなってましたよ」
全くニュースなんて観ないので、「ふーん」と言ってスマホにダウンロードしてある漫画を読み出す。
基本的にテレビはアニメだけしか観ないし、これからもそうだろう。
「だからなんですかね。告白が増えました」
深雪は少し迷惑そうな顔で呟く。
兄妹のように育った俺から見ても深雪はかなり可愛いと思えるので、学校では相当モテる。
まだ高校一年なのに学校一の美少女と言われるほどだ。
誰もが目に入る限りなく白に近い腰まで伸びているサラサラとした銀のストレートヘアーは綺麗だし、長いまつ毛に藍色の大きな瞳、雪のように白い肌に見惚れない人はいないだろう。
高校入学してから告白の嵐らしく、付き合う気もないと宣言しているのに告白が途絶えないらしい。
思春期男子というのは彼女が欲しくなるお年頃だからしょうがないが、宣言しているのに告白するとかどうかと思う。
中学の時にも告白されていたが、高校ではそれ以上に告白されるようだ。
「ラブコメラノベでたまにある身近な男子に偽装彼氏を頼んで告白を回避するか?」
告白が絶えないなら彼氏がいると言ってしまえば良い。
「それで済んだらもう俊くんに頼んでます。毎日一緒にいても告白されるんですよ」
深雪にとって一番身近な男子といえば毎日一緒にいる俺になる。
一緒にいるといっても幼馴染み関係だし、告白してくる人がいてもおかしくない。
それでも仲が良い異性がいれば、普通は告白される回数は少なくなるだろう。
だが俺という幼馴染みがいるのに、深雪は告白されまくっているのだ。
本人からしたら迷惑この上ないだろう。
「ならどうするんだ?」
「一応、対策はしときました。ゴールデンウィークが明ければわかりますよ」
対策があるなら大丈夫だろうし、特に気にすることなく「そうか」と頷く。
「眠気が取れない……」
「夜更かしするからいけないんですよ」
深雪「はあ~……」ため息つき、先ほどから読んでいる本を閉じた。
「しょうがないですね。俊くんの眠気覚ましに明日の予行練習でもしますか」
「予行練習?」
「はい。ただ、私とイチャつくだけの簡単なお仕事ですよ」
簡単なお仕事……? 何をするのかわからずに頭にはてなマークが浮かぶ。
予行練習に俺を巻き込むということは二人一緒にするのだろうが、偽装彼氏でないのはわかっているのでイチャイチャする必要があるかわからない。
考えても良くわからず、俺は面倒になって「はあ~……」とため息。
「何で面倒くさそうな顔をするんですか? 美少女と合法的にイチャつけるんですよ」
面倒にしている俺に、深雪は不満そうに「むう~……」と頬を膨らます。
確かに俺も思春期男子だからイチャつきたい気持ちはあるが、何やら先ほどから嫌な予感がしてならない。
「それに対策をしないといけないのは俊くんのせいなんですからね。ヘタれてないで早く私に手を出せばいいのに……」
後半部分は小声で聞こえなかったが、何故だか俺のせいにされてしまった。
「良くわからんけど付き合えばいいんだろ」
「はい。流石は私の幼馴染みです」
にっこりと笑みを浮かべた深雪は、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
イチャイチャするということは体を触れ合うということであり、恥ずかしさからか深雪の頬は赤い。
普段が白いからすぐにわかる。
「私の背中に腕を回してください」
「お、おう」
頷いてから深雪のことを抱き締める。
小学生の時とは違って色々と柔らかく、特に女性の象徴と言える膨らみが理性を崩壊させそうなくらいに俺を襲う。
華奢な体躯は力を入れたらすぐに折れてしまいそうであるが、それでも力を入れずにいられない。
少ししてコツンとおでこをくっつけ合い、キスが出来てしまうほどに距離が近くなる。
深雪の吐息が感じられ、すぐそこには柔らかそうな唇……思わず息を飲んでしまう。
「今はまだキスはダメですよ。このままでいましょう」
「わかってるよ」
甘い匂いや感触のせいででいつの間にかキスをしそうになったが、何とか我慢した。
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