「電源」

眞田くんも青葉くんが好きなの?


「おはよう、梓ー」

「おはよう。マリ、眞田くん」

「はよー」


 ここ3日間は、テスト返却ばかりでまともに授業をしていない。

 だからか、マリの機嫌も良いんだ。宿題も出されないし、確かに楽だよね。


 昇降口で靴を脱いでいると、後ろからマリと眞田くんがやってきた。なんか、最寄り駅が一緒なんだって。最近知ったとか。


「今日のお昼休みに、成績表貼り出されるって」

「そうなの?」

「理花が言ってた。今、ジミーくんがテストまとめ手伝ってるんだって?」

「らしいわね」

「昨日の放課後も、佐渡とやってたぞ。自販機に飲み物買いに行ったら、楽しそうに喋ってたし」

「そうなんだ」


 楽しそうに、ね。

 いいな。私も、青葉くんとおしゃべりしたいな。


 でも、いいんだ!

 再来週……いえ、今日だと来週か。来週に、青葉くんの家に遊びに行くんだもん。だから、別に青葉くんが誰と話してようと……。


「理花とジミーくんかあ。ジミーくん、結構ボサッとしてるから理花と相性良いかも!」

「佐渡って、すげーしっかりもんだよな。あれで末っ子って意外」

「ねー。……って、梓、どうしたの?」

「へ!?」


 私の脳内には、またもや楽しそうにおしゃべりしながら腕を組んで歩く2人の姿が映し出されていた。


 前は青葉くんが怖がってたけど、今は楽しそうにしてるんでしょ?

 なら、私が口出すことじゃないよね。……そうだよね。


「上の空になって、もう!」

「あはは。テストで頭使ったから」

「確かに、今回のテスト難しかったもんな」

「そうそう……」

「うーん……。あー、わかった! 梓ってさあ、ジミーくんのこと」

「え、あ……」


 眞田くんに相槌を打っていると、マリがニヤつきながらこっちを見てきた。


 嘘でしょ!?

 マリにもわかっちゃうくらい、私ってばわかりやすいの!?

 

「そ、そんなんじゃ「ジミーくんのこと、羨ましいんでしょ?」」

「……は?」

「梓、書類整理得意だもんね。ジミーくんじゃなくて、梓が頼まれたかったんでしょ?」

「う、うん……」


 マリが鈍感で良かった!


 あ、でも、眞田くんは誤魔化せないな。

 すごいびっくりした顔でこっち見てるもの。

 すると案の定、前を歩くマリには聞こえないよう小さな声で話しかけてきた。


「鈴木、もしかしてお前……青葉のこと」

「あ、えっと……その」

「わかりやす」

「……青葉くんには言わないでね」

「……おう。…………おう」


 あれ。眞田くん、元気ない?

 どうしたんだろう。もしかして、眞田くんも青葉くんが好きだったとか?



***



 4限終わり。

 いつもはチャイムガン無視でダラダラしゃべる生物の先生も、テストの順位貼り出しするからかすぐ終わらせてくれた。……毎回こうだといいんだけどね。


「梓、見に行こう!」

「うん。あれ、詩織は?」


 先生が教室から居なくなると、すぐにマリとふみか、由利ちゃんが来た。テストの順位貼り出し、今回は総合50位まで載ってるんだって。前回30位台だった由利ちゃんが、嬉しそうに話してたんだ。


「惨めになるからパスだって」

「……マリは?」

「私は、梓と由利ちゃんの勇姿をこの目で見るのだ!」

「……あはは」


 詩織は、ちょうど中間くらいの点数なんだよね。今回頑張ってたから、50位なら載ると思うんだけど。

 2学年全科合わせて大体350人くらいだから、そう考えるとうちのグループは頭良い方かも。マリだって、やればできるのにな。教えたらすぐできるんだから、ちゃんと授業聞けば良いのに。


 なんて会話をしながら、私たちは、そのまま昇降口の方へと歩いて行った。


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