お揃いストラップは友情の証


「はい、お土産」


 次の日の朝。私は、いつも通り迎えに来てくれた青葉くんにお土産を渡した。


 プラネットの限定ストラップ、キラキラしてて可愛かったからお揃いで買っちゃった。青葉くんにラインで「お揃いのストラップ買って良い?」って聞いたら「嬉しい」って返ってきたの。

 やっぱり、友達でお揃いの物持つって嬉しいよね。私も、マリと良くやってるからわかるわ。


「プラネットだ、ありがとう!昨日、イベント楽しかった?」

「うん!キラキラしてて凄かったの!」

「なんのイベントだったの?」

「あのね」

「はいはい、早く学校行かないと遅れるわよ。何時だと思ってるの!」

「わ、本当だ!」


 セイラさんの話をしようとしたら、キッチンから出てきたお母さんが急かしてくる。時計を見ると、7時過ぎてるじゃないの!いけないいけない。どおりで、双子が居ないわけだ。


 ソファに置いたカバンを急いで持つと、隣では青葉くんが早速スマホにストラップをつけている。私はどこにつけようかな。


「あら、2人でお揃い?」

「はい。今、鈴木さんからもらいました」

「よかったわね〜」

「うん!友達になって、はじめてのお揃いなの!」

「……え?友達?」


 お母さんは、何故か私の言葉に黙ってしまった。……なにか変なこと言った?


「え、五月くん。私、あなたたちのこと……」

「友達です」

「え、だって毎朝」

「友達です」

「え、その上着って五月くんの」

「……友達ですね」

「…………私の娘って、そんなに鈍感なの?」


 どういうこと?

 お母さんの言葉に、青葉くんは乾いた笑いを披露してくる。

 青葉くんと友達なんて、私釣り合ってないのかな。やっぱり、もっとイケメンにならないとダメ?そしたら、性別から変えないといけないわ。


「そこが、鈴木さんのかわいいところだと思ってます」

「そ、そう。五月くんは、それでいいの?」

「ええ。これ以上は高望みですから」

「……うちの子、見捨てないでやってね」

「見捨てるなんて。俺が見捨てられる側ですから」

「梓!」

「な、なによ」


 性転換ってどうやるんだっけ?なんて考えていたら、急にお母さんが大きな声で私の名前を呼んできた。びっくりしたわ、なんなの?


「あんた、五月くんに感謝しなさい!」

「へ!?し、してるけど」

「もっとよ!毎日跪いて五月くんを崇めなさい」

「は!?」

「梓、五月くんは天使なのよ」

「……は?」


 お母さん、何言ってるんだろう。ひかるみたいなこと言って!


 それを聞いた青葉くんは、「それはちょっと」なんて言ってるけど。なにがどうして、こんな会話になったの!?


「あ。鈴木さん、遅刻する」

「そ、そうね!お母さん行ってきます」

「気をつけてね!ちゃんと掴んでおくのよ!」

「……?」


 結局、なんの話してたんだっけ?


 私は、疑問に思いつつも青葉くんと一緒に家を出る。このままお母さんの話に付き合ってたら、学校遅刻しちゃう!


「今日、英語はグループ学習だって」

「みたいだね。眞田くんから、一緒にやろうってライン来てた」

「よかったね」

「うん!いつも1人だったから、グループ学習逃げてたんだ」

「そう……」


 グループ学習、男女別で組まないといけないのよね。女の私は、力になれないわ。

 やっぱり、青葉くんに釣り合うようイケメンになりたかったな。


「……イケメンじゃなくてごめんね」

「へ?」

「性転換は難しそうなの」

「え?なんの話?」


 私は、青葉くんといつも通り学校へと向かっていった。

 その後ろから、私たちを覗く人影があったことなど知りもせず。


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