あの時の笑顔が見たい




『登録ありがとうございます、青葉です。ご飯、楽しみにしています。終わったらまた連絡します』



「……」


 会計で、財布をバッグから取り出した時。

 スマホが光っていることに気付いて確認したら、青葉くんからメッセージが来ていた。フワフワな猫が、レジ打ちしてるスタンプと一緒に。

 かわいい、何このスタンプ。


「お客様?」

「あ、はい!すみません」

「ちょうどお預かりします。……こちら、レシートです」

「ありがとうございます」


 メッセージに見惚れていた私は、店員の声で我にかえる。いけない、こんなところでスマホは見るもんじゃないわね。


「ぼく持つ!」

「わたしも!」


 お金を払い終わると、すぐに要と瑞季がカゴを運んでくれる。今日は、お菓子を買えたからお手伝いしてくれるみたい。助かるわ。

 サッカー台に置かれると、いつもはしないのに袋詰めまでしてくれる。……自分たちのお菓子だけね!


「お家に帰ってから開けるのよ」

「わたし、シール付きのチョコ買った!」

「ぼくは、5連グミ〜」

「ちゃんと夕飯も食べてね」

「食べるよ!シチューだもん!」

「シチュー♪シチュー♪」

「こら、他の人の邪魔にならないように端行ってよ!」


 袋詰め、急いだ方が良さそう。タイムセール中だから人が多いのよ、この時間帯。


 返信、帰ってからになりそう。



***




 結局、私はメッセージを返さなかった。

 その代わり、「了解」のスタンプをひとつだけ。


 だって、なんて返したらいいかわからないんだもん。


「食べたら、ゴミは捨てるのよ!」

「はーい!」

「はーい!」


 さてと、連絡が来るまで下ごしらえ終わらせないと!

 野菜切って、鮭の骨取りして、下茹でして……。目標、15分!

 ああ!流石に、布団も取り込まないと。


 私は、お菓子を交換こして楽しそうに食べている2人を見ながら、キッチンで気合いを入れる。

 美味しいって言って、また笑ってくれるといいな。


 この時の私は、「忠告」されたことなんか頭の端にもないほど浮かれていた。


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