炎と水が交わるとき
珀露
第1話【炎の国】いつもの朝
炎の国の首都フレイム。炎を司る神を信仰する国の首都であり、炎をモチーフとした建造物が多く存在している。その首都の中心部にはその中でも一際巨大な建造物が存在していた。それはこの国の信仰の中心であり、政治、経済の中心でもある「炎の神殿」である。そして、その最上階には「炎の巫女」が住んでおり、神と人の架け橋として多くの者の尊敬、信仰の対象となっている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「フゥ様。朝ですよ。」
むにゃむにゃ。まだ眠いのです。
「フゥ様〜。朝でございますよ〜。」
なんか騒がしいですね。まだまだ僕は寝ていたいのですが。
「巫女様?もしかして死んでいらっしゃいます?」
うるさいのですよ。まだまだ全然起きる時間じゃないはz「起きろっつってんだろこのグータラ巫女!」バキィ!
痛ったぁ、、。いつものこととはいえ全力で蹴らなくてもいいじゃないですか。ベッドごと壁に叩きつけられるたびに防御魔法を使う身にもなってほしいのですよ。
「朝っぱらからなんなのですか!?まだ僕は寝ているのですよ!」
「いいから起きてください巫女様。もうすぐ朝の礼拝の時間ですよ。」
「まだ寝ていたいのです!礼拝とか幻影魔法でいいじゃないですか。」
「いいから起きてください。幻影魔法はいくら司祭の方々がボンクラでもバレますし、そもそも礼拝堂の中では魔法は使えません。」
「でも、僕の睡眠はどうなるのですか!?そうだ、体調が悪いことにして、」
「いい加減にしろよこのダメダメ巫女。もう一度ヤるか?」
「それはそれで面倒なのです。」
「じゃあ早く立ってください。巫女様の服と髪のセッティングは時間かかるんですから。」
「は〜い。」
と、毎朝のルーティンを終えて、僕は姿見の前に立ちます。姿見にはどこに出しても問題ないくらい可愛い少女が映っています。身長は140cmくらいのスレンダーな体型。寝癖でボサボサだけど艶のある腰まで伸びた燃え盛る炎のような赤い髪の毛。温度の高い炎のような青白い瞳。これが今の自分の姿なのです。
自分は元々は現代日本に生きるただの高校生だったはずなのですが気づいたらこの世界に転生していました。片田舎に生まれたと思ったらなんかすごい力を持っていたらしく巫女候補に選ばれまして、あれよあれよと気づいたら巫女として任命されていました。
この国の巫女はただの宗教的指導者だけでなく政治の実質トップでもありますし、何より国の象徴としての役割もあります。なので毎日仕事量が半端なく、睡眠時間が長くなってしまうのはどうしようもないのですよ。
「巫女様こっち向いてくださーい。」
起こしに来たのは僕専属お世話係のフィーラです。巫女候補の第2位、つまり僕の次に巫女に向いているとされた人です。巫女に何かあったときの代理も兼ねているので基本的に一緒に行動しています。
いつもの礼服に着替えながら僕はふと気になることができました。
「フィーラってもしかしてまだ自分のこと恨んでたりします?」
「どうしたんですか急に?決まった直後ならともかくもう3年も経つんですから今更恨んだってしょうがないじゃないですか。はいコルセット締めまーす。」
ギュゥゥゥゥゥ
「ちょ、つよ、強いというかちょっといた、痛いのですけど!」
「あ、すいませーん。ちょっと強く締めすぎました。フィーラちゃんたらおっちょこちょちょいなのでしょうがないですね♡。」
コツンと頭に手を当てながらそんなことを言われました。
「やっぱりまだ恨んでません?」
「いえいえ。今更恨むも何もないでしょう。それに、、」
「それに?」
「自分が巫女になっていたらフゥ様がお世話係だったわけで。」
「僕はお世話係でも完璧だと?」
「こんなグーラタ間違いなく1日目に滅!殺!してますね。」
「ひどくない!?」
流石にひどくないですか?1日目って流石にそんな、、、せめて3日目くらいにしてほしいのです。
「ふふふ、冗談ですよ。多分3日目くらいに宙吊りにするくらいですよ。」
「ああ、それなら......それはそれでダメなのですよ!?」
「さっきまで眠そうだったのにテンションの高い方ですね。はい、これで終わりです。」
「ありがとうなのです。」
僕はもう一度姿見をみます。そこには髪の毛をポニーテールにまとめ、うっすらと赤い色をしたベールを被り、赤を基調とした貫頭衣や腕につけられた赤いフリフリ?みたいなやつをまとった美少女の姿がいました。
「じゃあ行きましょうか。フィーラ。」
「この服着てるときは真面目そうに見えるんですよね〜。」
「私はいつも真面目ですが?」
「ちゃんとスイッチも入ってる、と。これなら大丈夫そうですね。では参りましょう。」
スイッチが入ってるとか言われました。むぅ。私はいつも真面目なはずなのです。
「今日の予定は?」
「朝の礼拝が終わったら第2会議室で首都及び主要6都市の商業ギルド長との会談。その後は正午まで溜まっている書類の処理。午後から各省庁の大臣との会議が第3会議室で夕方の礼拝まで。夕方の礼拝終了後は正面広場にて国民に向けた演説。その後、来週に迫った演舞の練習があります。」
ふむふむ。今日もいっぱいお仕事があるのですね。
「多くないのです?!やっぱり寝るのです!」
こんなにいっぱいやったら死にます。コミュ障の自分に会議で喋るとかましてや演説なんてできるわけないじゃないですか!
「ダメです。行きますよ。」
「やーだーなーのーでーーーーすーーー!ねーるーのーでーーすーーー!!!」
「いつも真面目な巫女様ならできますよね?」
「ウッ。わかったので、、、分かりました。行きましょうか。」
「はい。」
うーん。なんか丸め込まれた気がします。
とりあえず朝の礼拝が終わったら考えましょうか。
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