九月十一日 バス停

九月十一日 金曜日 曇のち雨


 今日のバスでの出来事。


 バスターミナルに到着する際に道路から停車場にL字ルートで入っていくバスに対してバスの横っ腹、巻き込み位置に向かって突撃するおばあさんがいた。バスの運転手は危険だとマイクで伝えるが聞こえないのか全く足を止める様子もない。


 もうすぐぶつかる、とバスの乗客たちも色めきだつ。しかし、おばあさんは寸前でバスの存在に気づき足を止めた。その瞬間だった。バスの中から一斉に怨嗟の声とも呼べる非難が沸き起こった。「危ないだろ!」「何考えているんだ!」等とまわりの乗客から、愚痴を言うかのような小声が上がったのである。


 おばあさんによりバスが立ち往生したこともありストレスが溜まっていたということは理解できるが、バスという日常の中でまさか皆が皆、小声とはいえ口に出してまで文句を言うとは思ってもみなかったのだ。ただ、降りてからもその怒りが続いているわけではなく、外のおばあさんに詰め寄る人もいなかった。単なるストレスの発散といったところなのだろう。


 帰りは帰りでバス停であるあるの「並び方問題」が起こる。このバス停のベンチは標識の横ではなく道路の逆側にあるので下手に並ぶと二列出来てしまうのだ。一番目の人はベンチ側だ。二番目の私はベンチに座るほどでも無いと思い標識横に立った。並んだときには気にしなかったがふと後ろを見るとベンチ側に長蛇の列だ。そして私の後ろには誰もいない。


 蒸し暑さも相俟って嫌な汗が流れ始める。「早くバスが来てくれたら良いのに」と変に焦るがあと十分は待たなければならない。その間ずっと「一人でそこにいるヤツ誰だよ」「ちゃんと並べよ」との声が聞こえる気がする。ずっと公開処刑されている気分だった。


 十分後、バスが来た。乗り込む際に三番目の人が私が乗り込むのを待っていてくれた。安心したと同時に後ろに並ぶ人を信じれなかった自分が恥ずかしくなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る