コンビニ人間 村田 沙耶香 著

極端に歪な主人公が、「コンビニ人間」と言う名のコンビニ労働者になり、アイデンティティのすべてをコンビニに丸投げする話だった。

いびつな「普通」ではない人間を主人公に置くことで、「ふつう」とはなにか? をずっと考えていく話である。

主人公は、途中、男性と居をともにすることで、仮初の「普通」を手に入れるのだが、徐々にその「普通」に居心地の悪さを感じ始める。

最終的に、主人公は「普通」を手放し、自分が「コンビニ人間」であることを自覚し、自分らしさのある「コンビニ人間」に生まれ変わる、というお話。

極端に歪な人間を二人描いておきながら、けしてデフォルメしていないどこにでもいるちょっと異常な人達と、

「普通」を極め、社会に適応している「普通の人達」の対比がなかなか新鮮でよかった。

もとより普通を目指しても普通になりきれない主人公と、普通に成長した主人公の妹の間でかわされる口論は、

どちらの発言も一方通行にしかなっていなくて、「ムラ」から爪弾きにされる側の主人公の持つ「違和感」が

「普通」の社会に生きる妹からは「異常性」にしか感じなかったんだろうな。

実際、主人公が「普通」に擬態できたと胸を張るシーンで、妹はこらえきれず号泣に至る。

「異常」側に生きる主人公の自覚なき孤独・孤立は、一人称の言外からも伝わってきた。

この本を読むと、普通とはなんだろう?普通でない人間の普通な部分との対比表現を読んで、いささか考えるようになった。

「普通」側に立つ人間が読めば、主人公の「奇妙さ」に驚くだろうし、

「異常」側に立つ人間が読めば、主人公の「異常さ」に共感を覚えるだろう。

自分はちょっと共感できてしまった。

あと文学っていいな、と読んでいて思ったわ。もっと深堀したいジャンルだ。

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