上段正拳突きは使いにくい?
筆者は空手をやっていて常々思っていました。
「上段正拳突きは使いにくい」と。
考えてもみてください。
人間の頭部という丸っこいものに、拳という丸っこいものを当てにいく。
すると、どういった事態が起きやすいか?
芯を外したら滑ります。
手が滑るだけならまだしも、勢い余って身体のバランスを崩してしまうこともあります。それは、わずかな隙が命取りとなる上級者同士の戦いでは大変危険な状態です。
何より、拳とは非常に脆いものです。
なにせ細長い指を集めてできたものですから、こんなものをいくら固めたところで当てどころが悪ければすぐに痛めてしまいます。
相手の正拳突きをわざと額で受けて拳を破壊する技もあるくらいです。
ボクシングのグローブを付けてさえ拳の怪我は後を絶たないというのに、素手や薄手のサポーターで打ち合っていたらどうなるかは想像に難くないと思います。
では、手技主体の筆者はどうしていたか?
正拳突きではなく『掌底突き』を主に使っていました。
掌底とは、手のひらの肉厚な部分のことです。この部分であれば拳より遥かに強度が高いので、怪我を気にせず全力で打ち抜くことができます。
丸い物体に対して面で打つので滑る危険性も低いです。
ただし、拳よりも数センチはリーチが短くなってしまうという欠点もあります。
筆者は元々リーチが短いのであまり気になりませんでしたが、間合いの勝負をする人には許容できない欠点かもしれません。
それから、試合では掌底突きは技ありとして認められないケースもありました。
顔面にモロに当たって明らかに大勢が崩れているのに、ポイントにならないのです。
「突きは正拳しか認めん」という頭の固い審判もいるようです。
ムエタイのキックが技ありを取ってもらえるのに、空手の掌底突きが技ありにならないなんて不思議な話です。
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