喫茶店「集い」

弥生

休日

休日はこの寂れた喫茶店で読書をするのがあたしのルーティン

心地好いBGMもそうだし、無愛想なマスターが全く干渉して来ないのが有難い


特に午前中は殆ど客もなく、このアンティークに囲まれたレトロな空間を独占出来る、あたしの秘密基地


の筈が


今日は隅のテーブル席で姦しく喋り倒す女の子グループの先客がいた

流行りのバンドか何かのライブにでも行く待ち合わせにこの喫茶店を使ったようだ


特に不機嫌に迷惑そうな顔をしていたツモリはないが、

あたしが本を読み始めるとまるであたしに気を使うかのようなタイミングでその女の子グループが席を立った

これでゆっくりと読書に専念出来る


「相席、よろしいかな?」


あたしはビックリして顔を上げた

ガラガラに空いている店内には空席があるのにあたしが座っているテーブルの向かいの席に男性が座ろうとしている


「そもそも喫茶店の【喫】は【喫煙】の【喫】なのに、近頃、喫煙者はどこに行っても肩身が狭い」


飲食店でタバコが吸えないのは今となっては常識だ

しかもまだあたしが何ら返事もしていないのに当たり前のように同席して話しかけてくるこの男性は何者なんだろう?


「灰皿のない喫茶店なんて喫茶店を掲げる資格ないな!そもそもこの店がなぜ【集い】って名前なのか、お嬢さんは知ってるかな?」


あたしは読書を諦めて本を閉じてテーブルに置き、その男性の話に付き合う事にした


きっと今日と云う休日はあたしにとってハズレくじみたいなものだろう

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