『最後の巫女AOI』

第379話 悪魔の実『イゼベル』

洞窟の奥で　唸り声をあげながら

叫び続けている男がいた

ダンの友人フロスである

フロスは数日前に

ジキルによって

リムラ村に持ち込まれた

ある劇薬を　投与されていた

それは悪根の呪術の効果を上げ

リムラ村を廃村にする為の

非常に危険な劇薬であった

この悪魔のような実は

「イゼベルの実」といい

エスタロスの根の樹液と混合する事で

麻薬のような作用があり　一度口にすると　

身を亡ぼすまで

薬を求め続けてしまう　

非常に危険な魔薬であった

かつて東の端に

栄えていた王国「オリエント」も

このイゼベルの実によって

滅ぼされたと言われている

それ程危険な悪魔の実なのである

このイゼベルの実が

リムラ村で栽培するようになったのは

３カ月前からである

アンヌ・マリー家の当主ハイドの使いの者達が

農家をまわり、高額な報酬を約束して

イゼベルの実とエスタロスの根の栽培を依頼していた

ダンの友人フロスの納屋に

収穫物が多く積まれており

ジキルが　収穫物を　

買い取りに来た時

調合したイゼベルの実を　

フロスに投与したのであった

そしてジキルは

フロスに悪根の呪術を唱えた

するとフロスの人格は崩壊し

まるで魔獣のように　雄たけびを放つと

家を飛び出して　行方が分からなくなった

フロスは人狼化したのである！

彼の存在が　リムラ村全体に

恐怖を植え付ける効果は絶大であった

「何て　恐ろしい事だ・・

フロスは　どうなってしまったのだ？」

フロスは夜な夜な

村中を　彷徨い歩き

農作物を荒らし　家畜を襲い

フロスを捕らえようとした　

村人達に襲いかかり

危害を加えるようになった

村人達は　恐怖に慄いていた

そんな最中

洞窟の奥深くにいるフロスを探しに

葵は洞窟の中へ　

一歩一歩　進んで行った

しかし突然　

葵の手を掴むダンが現れた

「戻れ！葵」

「父さん？」

「この先は危険だ！

すぐに洞窟を出るのだ！！！

さぁ！急げ！！！！！」