第222話  クリス王子の成長

「ヒナタさん!

葵巫女様を残して

僕達だけが避難する訳にはいかない!


僕も残ります!」

クリス王子が叫んだ!


◆◇


クリス王子は

ギルデロイ王都に来てから

常々感じる所があった


葵巫女は

サイカ達との出会いを切っ掛けに

毎日、カーメルタザイト鉱石の採掘場へ行き

サイカ達と汗を流しながら

現場の指揮をし、手伝っていた


しかしクリス王子は

他の任務を与えられたので

葵巫女との接点が無かった


「私は葵巫女様のお力になりたいが

側でお仕えする機会がなく

なかなかお役に立てていない・・・」


大陸ビジョン横断中も

足を引っ張る事が多く

男として情けない気持ちで一杯だった


しかしギルデロイ王都に着き

挽回する機会を狙っていたが

葵巫女はすぐにサイカ達と出会い

意気投合し、市街地復興の為に

カーメルタザイト鉱山採掘の一大事業が始まった


サイカ達の働きは外見からは

想像がつかない有能ぶりで

クリス王子も驚きを感じていた!


「私も彼らと働きたかった!」

しかしクリス王子は、最初の彼らの

外見に物怖じしてしまった為

距離を置いてしまった事が

葵巫女と別行動になる要因になった事を

今更ながら後悔していた・・


しかし巫女覇気による人材発掘と

能力開花は「すごい事だ!」

と毎回感嘆を覚えていた


市街地復興の新たな活路が

見出されたのである!


自分なら避けて通る人達を

葵巫女は自ら接近し

彼らの心を開かせた!

その度胸と未来予知ができる能力が

さすがだ!と改めて葵巫女に

尊敬の念を募らせていた


クリス王子は

「自分にも手伝わせて欲しい!」と

何度も申し出たのだが

クリス王子には不向きであったので

他の任務が与えられた


それは市街地の地域ごとの

景気動向を調べる調査だった


クリス王子は

スンツヴァル王都の

MIKOシティの新しい町作りの経験を活かし

ギルデロイ市街地でどのような取り組みが

必要かをリサーチして回っていた


結構大変な仕事で

クリス王子も最初は慣れずに

人とのコミュニケーションの図り方に

苦慮していたが、次第に誰とでも

会話ができるようになり

良い経験ができているようだった


そして王子としての

これまでの自分の生き方概念が刷新され

内心、充実感を感じていた!

「自分も少しは成長したように思う!」


◆◇


しかし突然

葵巫女とサイカ達に対して

軍団長リブァイの軍隊が

迫っている!と

知らせが入ったのである!


「クリス王子!!

危険が迫っています!

ナミさん達と逃げてください!」


「葵巫女様

私も残ります!」


「いいえ!!

ダメです!クリス王子は

ナミ商会とサイカさん達の引率をし

彼らを守ってください!


クリス王子が

この10日間

市街地の貧民層の人たちに

寄り添い尽力してくれた事を

私は知っていますよ!


どうか彼らに多少動揺が

生じると思うので

支えになってあげてください!」


「しかし葵巫女様に危険が!」


「私は大丈夫です!

だから急いで!

クリス王子!あなたを

頼りにしていますよ!


「・・・・・

分かりました

ご無事をお祈りしています」


「ありがとう!

クリス王子も気をつけて

後で落ちあいましょう!」


「必ずですよ!!」


「ええ!!」


しかしこの約束は果たされず

葵巫女とクリス王子の

最後の別れの挨拶となるのであった

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