第211話 『巫女の聖油』

「不破の洞窟」は

ペルム滝の轟音を立てながら

激しく流れ落ちる名瀑の

幾つもある落下点のうち

山上から10メートル地点に位置していた


そこにはドーム状の洞窟があり

生ける廃墟といえる場所

ラック達は近づくごとに

漂う悪根のオーラに

心臓が止まりそうな緊迫感を抱いた


「ラック!

ここは予想以上の...


私も一緒に行かせて!

ここは非常に危険な場所

生命が吸い取られような

これまでに感じたことがない

悪根の呪縛が・・・


あなただけを行かせられないわ!

私も使徒です!

一緒に行くべきよ!

二人で力を合わせましょう!!」


「お待ちください!

エルサ王女様!

不破の洞窟は

ひとりしか入ってはいけない掟があります!」


「掟とは何ですか?」


「何かと言われても・・・」


「盗賊団首領シロダが

500年前にこの洞窟の奥深くに

宝を隠して以降

何人位の人達が

洞窟内に入ったのですか?」


「それは・・・

分かりません!

しかし...」


「エルサ王女

ゲルドさんを

あまり困らせないでください!


首領シロダが

ひとりで入るように子孫に

伝えたのなら

何か理由があるのでしょう!」


「そうかもしれないけど・・」


「エルサ王女は

ここは私に任せてください!

そして私が無事に帰還できるように

祈ってください!


葵巫女様がいつも

言われていました!


『祈りは力』だと!


私は必ず今回の任務を

成功させてみせます!

悪種の呪縛に負けはしません!!

さぁ!皆で心を合わせ

神に祈りましょう!!」


◆◇


「神よ!

全治全能なる起源の存在よ!


ここに眠りし

秘宝は多くの命を救い

病を癒し、助ける為に必要です!


どうかこの洞窟にかけられた

悪しき呪縛を消滅させて下さい!


そしてサルディスの謎を解明し

全ての試練を乗り越えさせて下さい!」


ラックはエルサ王女

カイン兵士長

ゲルダとアリーナも加わり

手と手を取り合い祈った!


そして葵巫女より

使徒就任の際授けられた

予言者アブラハが持参した乳香と没薬と

巫女の涙を調合し作られた

『巫女の聖油』を頭に注ぎかけた


そしてさらに祈りを続け

大声で叫んだ!


『神よ!

今我に聖霊の力を与えたまえ!』


すると天より舌の様な火が降り

ラックに留まるように見えた


地は揺れ

洞窟内にある流水が

心地よいメロディを奏でる様に

波打ち騒いだ!


「こっ..これは何だ!

洞窟内を支配していた悪空間の力が

かき消されて行くぞ!」


《神の臨在がこの地に降りた》


■◆◇


『神よ!

あなたへの誓いは

私の上にあります


感謝のいけにえで

あなたにそれを果たします


まことにあなたは救い出してくださいました

私のいのちを死から

私の足をつまずきから


私が いのちの光のうちに

神の御前に歩むために!』

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