第92話 貴族マフィア達の改心

「ラック!

私は巫女として

貴族マフィア達の

歪んだ心が開かれるように

神に祈ります!


だからあなたは

8000人の会衆に希望を与えたように

この騒動を勇気を持って

収束して下さい!!」


「葵巫女様!

私は彼らを導ける程

器が大きくはありません!

しかしきっと神が力を与えて下さるでしょう!!


クリス王子!

エルサ王女!お願いがあります!

私の手を握り、共に祈って頂けますか?」


「勿論です!

ラック!」

エルサ王女が率先して

ラックの手を握ると

カフェ内にいた他の人々とも手を取り合い

心を静めていった


「共に祈りを捧げましょう!」


■□■◆◇


「我が子よ、見失ってはならない!

知性と思慮をよく見守れ

それらは、たましいの命となり

あなたの首に麗しさを添える


こうして、安心して自分の道を歩み

あなたの足はつまずかない

横たわるとき、あなたに恐れはない

休むとき、眠りは心地よい


にわかに起こる恐怖に

悪しき者たちの来襲に、おびえるな!!

主があなたの頼みであり

足が罠にかからないように

守ってくださるから!」


■□■◆◇


葵巫女の祈りが

その場の雰囲気を一変させた!


先程まで恐れ慄いていた者達の表情に

明らかな変化が生じ

希望を抱き始めているようであった

(人々の心がひとつとなった!)


「さぁ!ラック

あなたの手番です!」


勇者ラックは立ち上がった!!


「あなた方は

何故このような

暴挙を働くのですか?」


ラックの第一声に

貴族マフィア達は一瞬怯んだ


「アダム皇帝が

市街地で借金で苦しむ

都民達を救う為に、英断した法律に

なぜそこまで反対するのですか?


あなた達も彼らと同じ

スンツヴァル王都民でしょう!!

全ての国民が平和に『互いに助け合い』

幸せな家庭を築き、子供たちが笑顔で

都内を走りまわり、未来に希望を抱ける!


希望に満ちた社会にしたい!!

そうは思いませんか?


あなた達に良心は

残っていないのですか!?」


ラックの言葉が

カフェ内に響いていった

(巫女の祈りがその場にいた

全ての人の心を一つにし

誰一人恐れず、ラックを背後から支えるように

貴族マフィア達を一心に見つめていた)


貴族マフィア達は

自分達が優位な立場にあったにも関わらず

勇者ラックの力強い言葉に心打たれた・・・

特に『互いに助け合い』という言葉に対し

共感を覚えずにはおれなかった


「もうやめだ!

 ここまでだ!

俺は、これ以上自分の心に嘘をつけない!!


どうやら俺たちは

仕える相手を間違えてしまったようだ!!

さぁ!王子と王女の縄を解き、解放せよ!」

(マフィアの部下たちは

ラックと葵巫女に謝罪し、縄を解いた)


「クリス王子!!

この度の暴挙を

どうかお赦しください!

我々が間違っておりました!!」

(マフィア達は

クリス王子とエルサ王女の前に跪き謝罪した)


「我々は元下級貴族なのです!

しかしこの不況の煽りで土地を失い

仕事を失い、ごろつきのような生活をしていた時

今の貴族マフィアのボスに拾われたんです・・・

今のボスには恩義がありますが


本当は利息規制法の改正案可決の話を聞いた時

私は戸惑いながらも・・・

もう少し早く、この法律があったら

自分の人生は違った歩みをしていただろう!

そう思っていました・・・


クリス王子を見ていると・・・

夢を追いかけていた頃の自分を

懐かしく感じられます!


さぁ!

我々を捕らえてください!

もし今からでも人生をやり直せるなら

全うな歩みをしたい!」

(貴族マフィア達は完全降伏したのであった!)


「あなたがたに

謝らなければならない事があります!

実は、私はクリス王子ではなく

あの方もエルサ王女ではなく

巫女様なのですよ!」


「えええ!!

しかしあなたは確かに

王族の風格があり

威厳に満ちておられた!

もし我らを説得したのが

他の者であったら・・・

全く違う展開になっていたでしょう・・」

(どういう事なのだ?)

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