第59話 2人の母親の訴え

「離して!

どうして私が拘束されなきゃいけないの!

私が何をしたというの!?


私が自分の子が失った哀れな母親のように

接しないで!!!!!


あの女はウソをついている!!


あの子は私の本当の子なのに

どうしてみんな私を信じてくれないの??

あの女が私から奪ったの!

母親が自分の子を間違える訳ないじゃない!!お願い!!

どうか私にあの子を返して!!」


(子を奪われたと主張する母親は

泣きながら訴えていた)


しかし訴えられているもう一人の母親は

とても冷静だった


「あの女は自分の子を失い

気が動転しているだけです!

私は人の子を奪ったりしないし 

する理由がない!

子を失う事実はとても辛いこと・・・

どうか彼女に良い薬を出してあげてください!

早く現実を受け入れられるように

助けてあげてください!!」


役人達は、対照的なふたりの母親を前に

どちらが真実を話しているか?分からずにいた

ただ落ち着いて話をする母親が

真実を語っているように思えるが・・・


近隣の住民達の話を聞くと

気が動転している母親の肩を持つ人が多く

判断がつかない状況であった!


後方よりクリュゼル首相府長が大声で進言があった!


「葵巫女様!

この2人の母親の主張

どちらが真実か?判断がつきません


早く本当の母親を判明させ

返してあげたいのです!

どうかお力を貸してください!!

産みの母親に育てられることが子にとって

本当の幸せと言えるのですから・・・」


「本当にどちらが母親か

分からないのか?」アダム皇帝


「左様です・・・」


話を聞いていた葵は

静かに目をつむり

神を崇める祭壇の前にひれ伏した


「起源の存在なる

全知全能なる神よ!

どうか迷いし羊のような存在の

我らをお助けください!!


正しい道はひとつです!

主よ!あなただけが

全ての真実をご存じです!


何が正しく 何が間違っているのか?

見極める目をお与えください!!

正しい道をお示しください!


葵は『聖典』を手にとり

力の限り祈りをささげた!!


するとその場にいた全ての人々に

神の霊が下った!!!


そして葵の祈りに応答するかのように

各々祈り 涙を流すのであった・・ 


そして2人の母親も同様に泣きながら

祈りに導かれ 

お互いを攻撃しなくなった・・

(神よ!私たち偽りの発言をしていました!

どうかお許しください!!!!)

そして彼女達は黙り込み 沈黙してしまった  


しかし彼女達の心の祈りは

葵巫女とラックに届いていた


「葵巫女様

彼女達は どうやら我々に証言できない

深い事情があるようですね・・・」


「ラック!

あなたにも分かりますか?」


「ええ....

そもそも2人が争っていた原因は偽りであり

本当は互いに慈しみ合っていた・・

今回の事件は・・・

深い悲しみと 同情心が発端として

起こってしまったような気がします・・・


さらにこの場にはいませんが・

すぐにでも救済しないといけない者が

別にいるような気がしてなりません・・」


「ラック!

私も同意見です・・

クリュゼル首相府長!

2人の母親をここに 

連れてきてください!」

葵が命じると 


葵巫は彼女達に触れ 優しくハグをした

すると葵巫女を通して 神の深い憐みの霊が 

彼女達の心に触れ 彼女達を縛っていた 

悪根による迷いが 完全に消え去った


「巫女様・・・

全てを正直に・・・実は・・・」


2人の母親は全てを告白した!


そして語られた内容は衝撃的であり

信じられない真実が

隠されていたのであった!!

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