第53話 サラとの友情

「サラさん・・・

まだ起きていますか?」

葵はサラがいる店の奥に顔を出した


「葵巫女様 

どうかなさいましたか?

もうお休みになられていると思っていました」


「サラさんと過ごす

最後の夜だから 

暫くお話ししたいのだけど

構いませんか?」


「勿論です!

温かいレモネードでも作りますね!

待っていて下さい!」


「ありがとう!サラさん!」

サラは二人分のレモネードと

クッキーの盛り合わせを 用意してくれた


「サラさん!

今晩だけでいいですから

私の事を 葵ちゃんと

呼んでくれませんか?


サラさん夫婦には

本当にお世話になって

家族のように私に接してくれた・・・

とても感謝しています!


それに私・・・サラさんの事を 

本当のお母さんのように

感じていました!

だから巫女様と 呼び方が変わる事が

何だか寂しい気持ちになってしまって・・・」


「・・・・・・・・・

葵巫女様・・

私も ですよ・・


では今晩だけ 

葵ちゃんと呼ばせて頂きます!」


「ありがとう!サラさん!」


「葵ちゃん!」

サラは優しく葵の手を 握った


「私は 

葵ちゃんの事が大好きです!!

大切な特別な存在だと・・思っています!!

サラは感極まって 涙を流していた


「葵ちゃんは 私にとっても

家族同然の存在でした!


私達夫婦には

子供がいないでしょう?

だから・・・娘がいたら

きっと葵ちゃんのような子だったのでは?と

何度も想像した事があります!


私達夫婦は

13年前にガデム村にやってきて

最初商売をするのは とても大変でした・・

でもガデム村の人達と 少しづつ打ち解けられ

次第にお店に来てくれるようになって

今があります!


お店が繁盛するようになった切っ掛けは

私は妖精族の下級守護者だけれど

こんな私でも彼らの力になれる事があるのでは?

と思うようになり


人生に躓いて 途方にくれている人

生きる目的を見失っている人に

何とか元気になって欲しい!

その事だけを願い 店で出せる最高の料理を

これまで提供してきたつもりです!」


「そうですね!

私もお手伝いするようになり

ガデム村の人達や旅人たちの心に触れた時

人生に悩みを持つ人が 

いかに多いか!

という事を知りました!


人は一人では生きていけない!

支えてくれる存在 愛してくれる 

気にかけてくれる存在が大事だと!いう事を

サラさんの店で 学んだような気がします!


もちろん 私の心の支えは

サラさん夫婦でしたよ!!

感謝の気持ちで一杯です!」


「葵ちゃん・・・

私達夫婦こそ 葵ちゃんの存在が

家族のようであり 深い結びつきを感じ

大切な人生の時間を 共に過ごせたこと

感謝の気持ちです!


本当に!本当にありがとう!」


「サラさん!

私の最後のお願いを聞いてくれませんか?」


「何?葵ちゃん!」


「明日私は 

スンツヴァル王都に出発します!

ヨーデルさんとラック

そしてアニー、デル、シズ、ヘルド達も

同行する事になっているのですけど


サラさん夫婦も

一緒に来てはくれませんか?」


「葵ちゃん・・・

・・・・・・・・

ありがとう!

とても光栄な事です!!


13年前に預言者アブラハ様に

妖精の涙を授かり 運命の日が来たら

ガデム料理を提供する事が

私が派遣された 目的でした!


葵ちゃんと出会い

私達夫婦と暮らすようになって

学校に行ったり、この店で働いてくれた事を通して

この閉鎖的な村であったガデム村が

大きく生まれまわりました!


それは巫女様である葵ちゃんの存在が

彼らの心に 人生の本当の意味を知させる

きっかけになったのだ!と思います!


そして今回多くの有志が

リムラ村復興の為に尽力し

最高の結果を導きだされた!


全て葵巫女様のお力!

これからもっと多くの人達を救う事が

葵巫女様の使命であると!

私は理解しています!


私に葵巫女様のお力になれるか?

分かりませんが・・

どうか是非!ご一緒させてください!」


「ありがとう!サラさん!!」

サラと葵は

お互いの手を握り

まるで親子のようにお互いを慈しみ

抱きしめ合った









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