第37話  最初の救済者たち

葵は目を覚ました


すると自身に起きた変化を 瞬時に察した


「一体 私に何が・・・」

これまで感じた事がない 魂への深い満たしがあり

妖精族の守護者とは また違う

『ワールドの世界』の漲るオーラで 満ち溢れていた


これまでもサラの店で働きながら

他者と接する時 念じれば

相手の心の動きを 察し

負の感情に 働きかける力がある事は 分かっていた


お店に来たお客や アデルス学園の生徒達の力になりたいと

葵は 自分で出来る 精一杯の優しさを表現できるように

心を込めて 彼らと接してきたつもりだ


しかし今回ワールドの世界を訪れ

葵は自分自身に新たな力が 与えられた事を悟った!

それは『巫女』のみが得られる力である!


≪私には分かる!

これまで通らされたきた 全ての苦難

魂がボロボロになるまで 追い詰められ

死を覚悟する程までに 苦しんだきた 全ての過程は 


私が人の心を思いやり 

全ての人に愛を注ぐ為に

起源の存在;神があえて通らされた

必要な訓練であったのだと!≫


「私の魂は 今 

深く満たされている!

そして これまで見えなかった世界が

手にとるように 肌で感じられる・・・


ガデム村全体が 

鳥になって 全体を見渡すかのように

人々の動きが 手にとるように分かる!


そして店の前の通りを 

忙しく走りまわる労働者達の鼓動まで

感じる事ができるなんて!


「巫女」とは一

体何者なのだろう!


私は 最後の巫女葵として

これからなすべき事が 

少し先の未来まで 見通す事もできる!


さぁ今から

サラさんに打ち明けよう!


他の人々には 

混乱を真似ていてはいけないので

しばらくは「巫女」である事は

伏せておこうと思うが・・

私の変化に 気付く者が・・・いるかもしれない


妖精族の守護者である

サラさんとルスタ学園長には打ち明けよう


ラックには 恐らく 

悟られてしまうだろう!

彼もまた 選ばれた存在なのだから!!


巫女葵は しばらく黙想した


そしてワールドの世界で得た

神の言葉を 反復し

自分の魂に 刻み込んだ!


□◆□◇◆


「悪しき者のはかりごとに歩まず

悪の根の道に立ってはならない」


リムラ村に住む人たちは

人間が持っている

良心の根が閉ざされていた

だから悪の根の束縛から

まず解放してあげる必要がある

彼らの目を覚まさせるのだ!


「天の言葉を喜びとし昼も夜も

そのおしえを口ずさみなさい」


彼らが 主の言葉を受け止め

自分のものとする事ができたならば

人としての善良な性質が芽吹き

人間社会の秩序が回復されていく

しかし人として悪の根に戻り

以前の悪い性質の影が

悪の根が騒ぎ出す可能性も高い!


天の声 神の 言葉を

昼も夜もその教えを口ずさむことで

主の言葉が彼らを強め 守ってくれる

精神的不安定さから解放され

しっかりとした個人が形成される筈だ!


自分の生きる意味 目的が分かり

人としての存在意義が見えてくれば

きっと彼らは過去の弱さに戻ることはない!


「その人は流れのほとりに植えられた木

時が来ると良い実を結び

その葉は枯れない

そのなすことはすべて栄える」


彼らの人生は

流れのほとりに植えられた木のように

多くの実を結ぶ

豊かな人生が送れる!

そしてその葉は決して枯れない

なぜならそのなすことは

すべて栄えるのだから・・・


葵はワールドで得た言葉の意味を

しっかりと理解することができた

葵自身がこれから流れのほとりに

植えられた樹木となり

葵を通して彼らに命の言葉を流していく


希望が見えてくる

彼らの歓ぶ姿が!


■□■◆◇


昨晩 サラの食堂に

夜中に侵入者が

小麦を2袋盗まれそうになる事件が起きた


サラの旦那カムイが物音に気付き

侵入者を 捕らえる事ができたのだが。。


何と!忍び込んだのは子どもだったのだ 

その子達の名は シズ ヘルド姉妹であった


店の前は 盗難事件の一件で

保安官が呼ばれ 騒ぎになっていたので 

葵は すぐに駆け付けた!


葵がはシズとヘルドに近づくと

小さな声で 祈った!


「起源の存在;神よ!

悪根に束縛された

失われた魂に 完全なる解放を与えたまえ!!!」


すると何と!

シズ ヘルドを苦しめていた 

悪根の術が瞬時に解け

姉妹は正気に戻ることができた!


「一体何が 起こったの?

葵ちゃん 今何をしたの?」


「ごめんなさい!

私たちが悪かったです

どうか赦してください・・・」

シズとヘルドは泣きじゃくり 

盗みをした事を 反省し 謝罪をした


最初の救済者達である!

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