第14話  妖精の涙

「おい!

あの奥のテーブル見てみろよ!


いつも気丈で 

オレ達を励まして

元気の出る言葉と 

最高の料理を出してくれている 

女将のサラさんが・・・泣いているぜ!!


あの少女は 誰だ?

王族の貴族のご令嬢か誰かか?

高貴な方に見えるが・・・


それにあの隣にいる少年は

確か ヨーデルさんの息子のラックだよな!

何度か 見た事があるけど・・

なんだか様子が違うよな・・


ただの子供の筈だが・・

この村のガンメル村長が確か12年前まで

スンツヴァル王都の戦士長だったと思うが・・

彼に似たオーラを感じる・・


店内に来ていた他の客が

女将サラと葵そしてラックの3人に注目が集まり


女将サラがどのような食事を

少女に提供するのか?

注目が集まっていた


なぜなら これまで

誰一人 同じ食事が出た事がなく

訪れた客ひとりひとり 

違っていたのだから・・


そして全ての客が

出された料理に満足し

妖精族の秘術の力を得て

精神的な活力を得る事ができていたのである!


「葵ちゃん!

あなたに提供する食事だけど 

少し時間がかかるの

しばらく待っていてね!」


サラは厨房の奥に 

入っていった


「カムイ(夫)!

例の香油を準備して!」


「サラ!

例の香油を出す時が来たのか?

大変高価な香油だぞ?

今後 2度と手に入るものではないが・・

いいんだな!」


「いいのよ!私は 

この時の為に

預言者アブラハ様に 

遣わされたような気がするの!」


「そうか!分かった!!

では料理に腕を振るわなければな!!」


サラは夫のカムイに

厳選された材料と

『特別な香油』を手渡した


そして妖精族の最高位の秘術であり 

サラの生命力を注ぎ込み

魂のこもった料理が完成したのだ!!


□◆□◇◆


サラは店の外にある大きな竈を開けた

すると店内いっぱいに

ご馳走の香りが漂い広がった


サラは満面の笑みで

ご馳走を運んできた


店内の客が 料理を一目見ようと

葵達のテーブルを取り囲んでいた


「凄いぞ!この料理!!

ガデム地方で由緒ある伝統的なパサラ料理で

妖精族の最高位の料理だ!!」


人々は 料理を見て驚愕し

圧倒的な存在感に 

泣き出す者がいる程だった


サラは葵との出会いを

運命のように感じていたので


お店が出せる最高の料理

パサラ料理を葵にふるまったのだ


何が高価かというと材料がとにかく高い!

肉はガデム祭りがおこなわれう前に

王都からとりよせるデムの肉(銀貨2枚)

香辛料が『妖精の涙』といわれる

伝説の香油(銀貨3枚)であった!


この妖精の涙はとにかく貴重で

王族でさえなかなか手に入らない

伝説の香料で、ビンの中にたった1滴しか

入っていないのに銀貨3枚もするというのだから

その貴重さは普通ではない!


伝説では 

寿命を2倍に延ばす効力があると

伝えられている


今から2000年前

妖精族である初代巫女の涙が 

数滴 後世に残された

時の権力者が 大金をはたいて購入したところ

寿命が延び 180歳まで生き

長寿を全うしたとの事


(めったに手に入らないものをどのようにして)

ヨーデルは不思議でならなかった


「おいおいサラさん!

これはいくら何でも」


「いいのよ!

わたしは葵ちゃんに

幸福になってもらいたいの!」


この料理はただ材料が

高いだけではない食べた瞬間から

幸せな時間(世界)が訪れる

不思議な作用があると言い伝えがある


ただの伝説かもしれないけど妖精の涙は

異世界に繋がる鍵と

言われている伝説の香料


これまで誰も妖精が住む

異世界に行った人はいないけど

私は妖精の涙が存在する以上

異世界はあると信じられている


「今日葵ちゃんに出会って

不思議な感覚に捉えられたの!

あなたはとても可愛い子

心がとても澄んでいる

そして特別な加護があるように思える

わたしの2000年前の先祖は

大陸エデンに住んでおり

初代巫女様に仕えた

妖精族と言われているのよ!」


(この妖精の涙は

預言者アブラハ様が授かった

我が一族の家宝!

葵ちゃんあなたはもしかしたら)


サラはただの思いつきで

パサラ料理をふるまった訳ではない

不思議なことだが

神の導きがあり行動したのだ!


葵は特別な存在なのだから


葵の前に出された

伝説のパサラ料理を目の前にして

葵は躊躇することなくスプーンを手にとり

小さな口に料理を含んだ・・・

(いつも遠慮する葵が勝手にスプーンに手をとっていた)


「不思議な味・・美味しい 」

肉料理よりこのキラキラ光る不思議な香辛料が

とてつもない存在感を放っていた!


すべてを食べ終え

葵は静かな眠りに 入ってしまった


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