第13話 妖精族の守護者サラ

「サラさん

お願いがあります!


僕は、葵ちゃんに

元気になって欲しいのです!


だからこの店で出せる 

一番美味しい料理をお願いします!


お金はあります!

これで足りますか?

足りなければ 

後から必ずお支払いします!」


ラックはポケットから

さっきお駄賃で父からもらった銅貨1枚を

テーブルの上にのせた


突然のラックの行動に

一同はとても驚いた

まさかラックにとって

初めて得た労働の報酬を

惜しみなく提供しようとしたのだから・・


「ありがとう!ラック

でもあなたの気持ちだけで十分よ!

私は、自分の食事代は自分で払います!」


サラはラックと葵のやり取りを見て思わず叫んだ


「ふたりの関係は 

とても素敵ね!

お互いを思いやる姿を見て・・

とても微笑ましく 感じたわ!


安心して!

今日は私がご馳走するから!


葵ちゃん わたしはね!

人の幸せに触れる事が大好きなの!


妖精族の守護者という 

神から特別な使命を受けて

これまで 色々な人達に出会ってきたけど

あなた達は、これまで出会ってきた

どの人達よりも 

心が澄んでいて美しいわ!


これは とても素晴らしい事なのよ!

誇りに思うと良いわ!胸を張りなさい! 」


「ありがとうございます!

ラックは 葵が褒められた事を 

自分が褒められた事よりも 

嬉しく感じていた


「私はね 相手の手を握ると 

人間性を見抜き

心が支配しているものを 

推し量る事ができるの!


そして もし心に傷があったり 

闇が心を支配していたら

相手の為に祈り

心がまっすぐ 

正しい方向に向けるように導いてあげる

そして本人が自分の力で

進めるように 背中を押してあげる!


それが私達妖精族の守護者の使命であるの!


葵ちゃん!分かるかな?

あなたは まだ幼いけど 

手を握らなくても伝わるものがあるわ・・・

多くの苦しみにあってきたようね・・

でも決して目は濁っていない・・何故かしら?


葵ちゃんの手を握らせて貰うわね!」


サラは葵の正面に立ち

両手で包みこむように葵の手を握った


すると・・・葵のこれまでの深い闇の人生が見えると・・

サラは、耐えられず 

泣き出してしまった


「何てこと・・・

こんな事があっていい筈がない!!

葵ちゃん あなたは 

よくもこれ程の苦しみを・・耐えて。。


でも深い闇に 突然光が照らされて・・・

葵ちゃんを包み込んでいく・・・

あなたまさか 伝説の大陸に?」


葵にとって 

リムラ村が廃村化してからの

1年は地獄であった

父ダンの 豹変した事により

死より苦しい時間を 長く過ごしていた


それ故 心も体もボロボロで

まさに 生きた屍の状態であり

生きていて死んでいる状態であったのだ


しかし サラが幻で見た世界

ワールドの世界に導かれて

全ての闇に対して 神の言葉が発せられた


「光よ!あれ」

すると茫漠とした闇の世界が

一瞬の内に 光で覆われ

気がつけば ワールドの世界に導かれていたのだ


□◆□◇◆


葵は 目を覚ますと

『伝説の大地 ワールドの国へ』


はじめてワールドの国に来たその日は雨だった 

父から暴力を受けるようになって1年


葵の心が荒んでおり

深い傷が痛ましい程に 

彼女の魂を覆っていた

まるで抜け殻・・ただ息をしているだけの存在だった


しかし尽きかけようとしている

その魂に向かって 起源の存在・神が言った!


『すべて疲れているもの・・・重荷を・・・・』

まるで葵の全ての痛み苦しみを 理解し

受け止めてくれているように 感じられた


彼女の魂に光が 注がれていく・・・・・・・・・


時は流れた

・・・・

・・・・・

・・・・・・



葵が流した涙と雨が交じり合い 

彼女のさけた額の血が 

綺麗に洗い流されていた


葵の小さな拳に 

かすかなに残る血の結晶が 

美しく輝いている

命の言葉をあなたに与えよう!!


「すべて疲れているもの 

重荷を負っているものよ 

わたしのもとに来なさい 

私があなたを休ませてあげよう!」


癒しの言葉が 生命となって 

漲る優しいメロディーのように聞こえてくる 

不思議な力が 葵の心の深い闇に光を照らし 

すべての闇の力を打ち砕いた!


葵は静かに目を閉じた

ワールドの世界は 葵の為に存在する 

なぜなら彼女は 大切な存在なのだから・・・


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